3拠点の訪問看護会社/アセスメント作成を約1時間から5分へ短縮した話
訪問看護 × 新規利用者アセスメント・社内情報共有 × 3拠点・従業員数非公開の公開事例

福岡県北九州市で3つの訪問看護ステーションを運営するプーラビダ株式会社は、24時間体制で難病、精神疾患、終末期ケアなどに対応しています。

事業が急拡大した時期には、連絡が個人の端末や口頭に散らばり、教育や事務処理も追いつかず、離職率が一時83.3%まで上がりました。

同社は、Google Workspaceを土台に、連絡、予定、申請、手順書、勤怠・給与関連の情報へ同じ入口から到達できる社内ポータル「ほぽたくん」を内製。Geminiも組み合わせ、新規利用者の情報を整理するアセスメント作成を約1時間から約5分へ短縮しました。

その後、離職率は7.7%へ改善し、直近年度は退職者0人。利益率も10%を超えたと、IPAの2026年8月19日公開インタビューで紹介されています。

ただし、離職率改善をAIやポータル単独の効果とは断定できません。同社は経営方針、教育、情報共有、働き方を含む組織全体の立て直しを進めています。本記事では、その中でも他社が参考にしやすい「情報の入口」と「アセスメント作成」の改善に焦点を当てます。

課題:24時間対応なのに、必要な情報の入口が人ごとに違った

訪問看護では、事務所に全員がそろう時間が限られます。看護師は利用者宅を回り、夜間や休日の連絡も発生します。

情報が口頭、個人宛てのメッセージ、ファイル、紙へ分かれると、同じ質問が繰り返されます。新人は「どれが最新版か」を確認するだけで時間を使い、経験者は説明のたびに仕事を止めます。

新規利用者を受け入れる際のアセスメントも、集めた情報を読み直し、決められた項目へ整理する必要がありました。単純な転記ではありません。医療・生活・家族状況を踏まえ、支援に必要な点を人が確認する仕事です。

公開資料をもとに状況を会話形式へ再構成すると、次のようになります。理解を助けるための再構成であり、実際の発言ではありません。

現場職員:「夜間に確認したい手順があっても、保存場所が人によって違います」
新人職員:「質問する相手を探すところから始まり、同じ説明を何度もお願いしています」
管理者:「利用者の支援へ使いたい時間が、情報探しと資料整理に消えています」

問題は、職員の努力不足ではありません。情報を持つ人へ聞きに行かないと仕事が進まない流れでした。

施策:社内情報を一か所へ集め、AIは整理の下書きに使った

改善の中心は、道具を増やすことではなく、入口をそろえることでした。

ステップ1:何度も聞かれる情報を洗い出す

最初に、勤務、給与、申請、訪問予定、手順書、新人教育など、問い合わせが繰り返される項目を並べます。

「よく聞かれること」から着手すると、ポータルを作った直後から使う理由が生まれます。全部の資料を一度に移す必要はありません。

ステップ2:同じ入口から最新版へ進めるようにする

ポータルには、情報そのものを全て詰め込むのではなく、職員が必要な場所へ迷わず進める入口を作ります。

予定はカレンダー、申請は入力画面、手順書は共有文書というように、置き場所を役割ごとに決めます。古い資料が検索結果へ混ざらないよう、更新担当と更新日も残します。

ステップ3:アセスメントはAIに完成させず、下書きを作らせる

新規利用者の情報をAIへ整理させる場合も、完成品としてそのまま使いません。

入力してよい情報の範囲、利用する契約、保存・学習利用の条件、閲覧できる職員を確認します。初期検証では、個人情報や機密情報を置き換えたサンプルを使います。

AIが項目ごとの下書きを作り、担当者が原資料と照合し、支援判断を加えて確定する。医療・介護の判断責任は人に残します。

ステップ4:現場が自分で直せる小さな単位に分ける

使いにくい画面や古い手順を、外部業者へ毎回依頼しなければ直せない状態にすると、改善が止まります。

同社の特徴は、現場主導で社内ポータルを内製したことです。専門的な部分は外部支援を使っても、見出し、リンク、入力項目、手順書の更新は社内で回せるようにします。

ステップ5:時間だけでなく、働き続けられるかを測る

作成時間、問い合わせ件数、手戻りだけでは不十分です。

新人が一人で必要情報へ到達できた割合、夜間連絡の件数、休暇を取りやすくなったか、退職理由に変化があるかも追います。効率化を人員削減ではなく、職員を守る環境づくりへ結びつけます。

成果:約55分を、確認とケアの設計へ戻した

公開資料で確認できる変化は次の通りです。

項目BeforeAfter変化
新規利用者のアセスメント作成約1時間約5分約55分短縮
社内情報への入口個人端末・口頭などに分散社内ポータルから到達最新情報を探しやすくした
離職率一時83.3%7.7%組織全体の改革後に改善
直近年度の退職者公開資料に人数記載なし0人定着の改善
利益率改革前の数値は非公開10%超経営面でも改善

アセスメントの約55分短縮は大きな成果ですが、本当に重要なのは、短くなった時間を何へ戻すかです。

元資料との照合、利用者本人や家族への確認、職員間の支援方針共有に使えば、速さと品質を両立できます。逆に、5分でできることだけを理由に確認を省けば、事故につながります。

なぜ効果が出たか:AI導入ではなく、働き方の入口を変えた

同社は、単発のAIツールを配っただけではありません。

まず、連絡や教育が特定の人に集中する状態を見直しました。次に、職員が同じ入口から必要情報へ進める環境を作りました。その上で、時間のかかる資料整理へAIを組み込みました。

順番が逆ではないことがポイントです。

情報が散らかったままAIを入れると、古い資料や誤った手順を速くまとめるだけになります。入口、更新責任、閲覧権限、人の確認をそろえてから使うことで、現場に定着しやすくなります。

なお、この取り組みはDXセレクション2026のグランプリに選ばれています。2026年8月時点の公開事例であり、同じ数値が他社でも再現されることを保証するものではありません。

横展開:情報が人へ集まりすぎる現場で応用できる

同じ考え方は、訪問看護以外にも使えます。

  • 介護事業所:申し送り、勤務、請求手順、新人教育
  • 設備点検会社:現場予定、点検基準、写真、報告書下書き
  • 士業事務所:案件進捗、期限、定型文、調査メモ
  • 多店舗サービス業:店舗連絡、在庫、シフト、接客手順

共通するのは、「詳しい人へ聞かなければ仕事が進まない」状態です。

最初の一歩は、問い合わせ内容を1週間だけ記録し、同じ質問が3回以上出た項目を一つ選ぶこと。そこから入口をそろえ、下書きだけをAIに任せ、人の確認時間まで測ります。

まとめ:職員を減らすためではなく、職員が続けるための仕組み

プーラビダの事例は、訪問看護のアセスメント作成を約1時間から約5分へ短縮しました。同時に、社内情報の入口を整え、より大きな組織改革の中で離職率を83.3%から7.7%へ改善しています。

AIを使う目的を「人を減らす」ではなく「人が専門業務へ集中し、働き続けられる」に置いたことが、この事例の核です。

情報探しや定型資料づくりに時間が取られている現場があれば、まず入口を一つにするところから始められます。

気になる業務があれば、お気軽にお声がけください。弊社では、中小企業のAI活用や社内ポータルづくりを、情報整理と現場運用から伴走しています。

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