従業員数非公開の訪問介護事業所/シフト連絡を月23時間減らし、ケア相談を月10時間増やした話
訪問介護 × シフト調整・サービス提供責任者 × 従業員数非公開の公開事例

東京都町田市の訪問介護事業所では、サービス提供責任者が訪問介護員へ毎日の予定を電話やメールで伝えていました。急な変更が入るたびに個別連絡が増え、連絡の行き違いから訪問忘れも起きていたと、厚生労働省の事例集に記録されています。

そこで、最新の予定を同じ画面で共有し、更新時には介護員のスマートフォンへ自動で知らせる流れへ変更しました。結果は、サービス提供責任者の連絡業務を月23時間削減。さらに、利用者への介護について相談する時間を、責任者1人当たり月10時間増加させました。

この記事は厚生労働省「介護サービス事業における生産性向上に資するガイドライン」の事例60をもとに、他の中小事業所でも検討しやすい順番へ整理したものです。公開資料にない従業員数、費用、導入期間は推測しません。資料にある「プロジェクトメンバー5名」は、事業所全体の従業員数ではない点にも注意が必要です。

課題:予定変更のたびに、同じ連絡を何度も繰り返していた

訪問介護の予定は、固定した表を一度配れば終わりではありません。利用者の体調、家族の都合、職員の欠勤、移動時間によって、当日まで変更が発生します。

従来は、責任者が一人ずつ電話やメールで連絡していました。受け手がすぐ確認できなければ、時間を置いて再連絡します。介護員側からも予定や利用者情報を電話で問い合わせるため、責任者の作業は細切れになります。

公開資料をもとに現場の状況を会話形式へ再構成すると、次のようになります。以下は理解を助けるための再構成で、実際の発言ではありません。

責任者:「予定表を送った後に変更が入ると、誰が最新情報を見たのか分かりません」
介護員:「移動中に電話へ出られず、前の予定を見てしまうことがあります」
管理者:「連絡だけで一日が細切れになり、利用者の支援を相談する時間が後回しです」

問題は、電話という道具そのものではありませんでした。最新の予定が一つの場所にまとまらず、責任者だけが全体を把握していたことです。

施策:予定を一つの画面へまとめ、変更通知まで自動にした

改善の中心は、複雑な仕組みではありません。

責任者が予定を更新すると、介護員が同じ画面で最新版を確認できる。更新時にはスマートフォンへ通知が届く。介護員から責任者への連絡や報告も、できる範囲から画面上へ移す。

当社が同様の相談を受ける場合も、いきなり全てを置き換えるのではなく、次の順番で進めます。

ステップ1:責任者の一日を見えるようにする

まず、予定作成、個別連絡、再連絡、問い合わせ対応、変更記録に何分かかっているかを1〜2週間だけ記録します。

「忙しい」という感覚だけでなく、誰への連絡が何回発生したかまで数えます。厚生労働省の事例でも、業務時間を見えるようにしたことで、個別のスケジュール連絡が改善対象だと特定できました。

ステップ2:新しい流れと、増える作業を先に書く

画面共有を始めると、個別連絡は減ります。一方で、予定の登録、職員アカウントの管理、操作方法の問い合わせなど、新しい仕事も増えます。

減る仕事だけを説明すると、現場は「聞いていた話と違う」と感じます。導入前に、減る作業と増える作業を同じ紙に並べます。

ステップ3:小さな範囲で試し、介護員の声を集める

全員一斉ではなく、数名と一部の予定から試します。

文字が小さい、移動中に見つけにくい、通知が多い、圏外で確認できない。こうした使いにくさは、会議室だけでは分かりません。試験期間中は、困った時の連絡先を一つに決めます。

ステップ4:例外時の連絡方法を決める

緊急変更まで画面通知だけにすると、見落としが事故につながります。

通常変更は画面と自動通知、直前の緊急変更は電話も併用する。通知を見たかどうか確認する条件も決める。自動化する範囲と、人が直接連絡する範囲を分けます。

ステップ5:月1回、ルールを見直す

一度決めた運用を固定しません。

問い合わせの多い画面、通知が届かなかった場面、訪問忘れにつながりそうだった出来事を振り返ります。仕組みを入れて終わりではなく、使いながら直せる状態にします。

成果:連絡の削減時間を、利用者支援へ戻した

公開資料で確認できる変化は次の通りです。

項目BeforeAfter変化
予定の共有電話・メールで個別連絡画面更新と自動通知責任者の連絡負担を軽減
責任者の連絡業務個別連絡と再確認が集中同じ画面で最新版を共有月23時間削減
介護に関する相談情報共有に時間を取られる支援内容の議論へ時間を配分責任者1人当たり月10時間増加
訪問忘れ発生していた減少定性的改善

ここで注目したいのは、23時間を単なる余り時間にしなかったことです。

会議では予定の読み上げを減らし、利用者の状態や支援方法を話し合う時間へ振り替えました。効率化の目的を「連絡を減らす」ではなく「ケアの質へ時間を戻す」と決めていたから、現場にも意味が伝わります。

なぜ効果が出たか:情報を送る人を増やさず、見る場所を一つにした

電話やメールを速くするだけでは、責任者への集中は変わりません。

今回の事例では、介護員が自分で最新予定を見られるようにしました。責任者が全員へ情報を配る流れから、必要な人が同じ情報を見る流れへ変えたことが本質です。

また、試験導入、問い合わせ窓口、継続的なルール更新まで設計されています。新しい道具を入れただけではなく、現場が困った時に戻れる場所を用意した点も定着につながりました。

なお、スマートフォンやタブレットの準備、操作説明、利用者情報を見られる人の設定は必要です。個人情報を扱うため、端末の紛失時対応、画面ロック、退職・異動時の権限解除も導入条件に含めます。

横展開:訪問介護以外でも「最新版が一つでない仕事」に使える

同じ考え方は、予定変更が多い他業種にも応用できます。

  • 訪問看護:訪問予定、担当変更、申し送りの共有
  • 配送業:配達順、再配達、車両変更の共有
  • 設備点検:訪問先、担当、緊急対応の割り当て
  • 清掃業:現場変更、鍵の受け渡し、完了報告

共通するのは、予定を作る人だけが最新情報を持っている状態です。

最初に測る数字は、電話件数、再連絡回数、変更確認の時間、予定の見落とし件数。削減後に、その時間を顧客対応や品質改善へ何時間戻せたかも追います。

まとめ:シフト共有の目的は、連絡を減らすことではない

この事例は、シフトを画面へ移しただけの話ではありません。

個別連絡を月23時間減らし、利用者への支援を相談する時間を月10時間増やした。削減した時間の使い道まで設計した点に価値があります。

予定変更の電話が多い、誰が最新版を見たか分からない、管理者が調整だけで一日を終えている。そんな業務があれば、まず1〜2週間の連絡件数を数えるところから始められます。

気になる業務があれば、お気軽にお声がけください。弊社では、中小企業のAI活用や業務システムづくりを、現場の運用設計から伴走しています。

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