従業員12名の税理士事務所/月次報告を翌月20日から10日に早めた話

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神奈川県横浜市の税理士事務所では、経理担当者が顧客35社分の月次処理を担当していました。

仕訳入力、帳簿作成、月次試算表、経営分析、税務相談用の資料。

毎月やることは決まっています。

それでも、報告は翌月20日頃になりがちでした。

担当者の方は、最初にこう話していました。

「入力は終わっているのに、確認と説明資料でいつも詰まります」

税理士事務所では、ただ数字をまとめるだけでは不十分です。

顧客に説明できる形に整える必要があります。

ここに時間がかかっていました。

課題:手作業が多く、確認のたびに時間が戻る

この事務所では、顧客ごとに処理のクセがありました。

現金取引が多い会社。

カード明細が多い会社。

部門別に数字を見たい会社。

前年同月との比較を必ず求める会社。

担当者は、それぞれのルールを頭で覚えていました。

しかし、顧客が35社になると、記憶だけでは限界があります。

「A社はこの勘定科目でよかったかな」

「B社は役員報酬の説明を前回どう書いたかな」

こうした確認で手が止まります。

さらに、月次報告書を作るときも、前回の資料をコピーし、数字を差し替え、コメントを書き直す流れでした。

その結果、1社あたり平均8時間ほどかかっていました。

月末月初は残業が増え、顧客から「もう少し早く数字を見たい」と言われることもありました。

施策:顧客ごとの処理ルールをためて、月次報告の流れを作った

弊社が支援するなら、まず「AIで全部自動化しましょう」とは言いません。

会計や税務の判断には専門家の確認が必要だからです。

その代わり、AIが得意な部分に絞ります。

過去の処理ルールを整理する。

月次報告の下書きを作る。

数字の変化から確認ポイントを出す。

人間が判断する前の準備を軽くする形です。

ステップ1:顧客ごとのルール表を作る

最初に行ったのは、顧客ごとの処理ルールを一覧にすることです。

よく使う勘定科目。

毎月確認する取引。

担当者への確認が必要な項目。

報告書に入れる定番コメント。

これらを情報をためておく場所に整理しました。

担当者の頭の中にあった暗黙のルールを、誰でも見られる形に変えたのです。

ステップ2:月次報告の下書きをAIに作らせる

次に、試算表の数字と過去コメントをもとに、AIが月次報告の下書きを作る流れを作りました。

ここで大事なのは、AIの文章をそのまま顧客に出さないことです。

AIは、売上、粗利、人件費、外注費、広告費などの変化を拾い、確認すべき点を下書きします。

最終的な説明は、税理士や担当者が見て直します。

「ゼロから書くより、直す方が圧倒的に早いです」

担当者の方はそう話していました。

ステップ3:数字の異常値を確認リストにする

毎月の処理で怖いのは、見落としです。

前月比で大きく動いた項目。

前年同月と違う動きをした項目。

いつも出ない勘定科目。

これらを自動で確認リストに出すようにしました。

AIに判断させるのではなく、人間が見るべき場所を先に出す。

これにより、確認の抜け漏れが減りました。

成果:1社8時間から3時間、月次報告は10日早く

導入後、月次処理は1社平均8時間から3時間へ短縮されました。

報告のタイミングも、翌月20日頃から翌月10日頃へ前倒しできるようになりました。

項目BeforeAfter
月次処理時間1社平均8時間1社平均3時間
報告タイミング翌月20日頃翌月10日頃
顧客満足度78%92%
報告書コメント前回資料を探して作成AI下書きを担当者が確認
顧問料据え置き中心平均20%値上げを実現

数字が早く届くようになると、顧客の反応も変わります。

「今月の広告費、早めに見直せました」

「資金繰りの相談が月末前にできるようになりました」

会計資料が早くなると、経営判断も早くなります。

結果として、付加価値サービスとして評価され、顧問料の平均20%値上げにもつながりました。

なぜ効果が出たか

効果が出た理由は、AIが会計判断を代わりにしたからではありません。

担当者が毎回探していた情報を、先に出せるようにしたからです。

税理士事務所の仕事では、正確性が最優先です。

だからこそ、AIに任せる範囲を間違えてはいけません。

AIに任せるのは、下準備。

人間が見るのは、判断。

顧客に出すのは、確認済みの説明。

この役割分担が大切です。

また、顧客ごとのルールを整理したことで、担当者が休んだときの引き継ぎもしやすくなりました。

「この会社は担当者しか分からない」という状態が減ったことも、大きな副次効果です。

横展開:専門サービス業ほど効果が出やすい

この流れは、税理士事務所だけではありません。

社労士事務所なら、助成金書類や労務相談の下書き。

行政書士事務所なら、許認可申請の確認リスト。

保険代理店なら、契約更新と提案資料。

コンサルティング会社なら、月次レポートと改善提案。

専門サービス業では、毎回似た流れで、顧客ごとに少しずつ違う仕事が多くあります。

そこにAIを組み込むと、ゼロから考える時間を減らし、専門家が本当に見るべき部分に時間を使えます。

導入時に注意したこと

会計業務にAIを入れるとき、一番避けたいのは「AIが言ったから正しい」という空気です。

数字の判断、税務上の確認、顧客への説明責任は、必ず専門家側に残します。

そのため、今回の仕組みではAIの出力に「確認済み」という扱いをしませんでした。

AIが作るのは、あくまで下書きです。

担当者は、下書きを見て、数字と根拠を確認し、必要な表現に直します。

また、顧客ごとの処理ルールも、最初から完璧に作ろうとしませんでした。

よく使う10社分から始め、翌月にまた10社追加する。

このように段階的に整えました。

税理士事務所のように正確性が大切な業務では、スピードよりも定着が重要です。

無理に全社一斉で変えるより、担当者が安心して使える範囲から始める方がうまくいきます。

定着のポイント

月次報告の流れを変えるときは、顧客にも伝え方を工夫します。

「AIで報告します」と言う必要はありません。

顧客が知りたいのは、AIを使ったかどうかではなく、数字が早く、分かりやすく届くかです。

そのため、説明としてはこう伝えます。

「月次の確認項目を整理し、前月との差が分かりやすい形でお届けします」

これで十分です。

社内では、毎月の報告後に、AI下書きで役に立った部分と、修正が必要だった部分を記録します。

この記録がたまると、翌月以降の下書き精度も上がります。

AIを入れる目的は、担当者を置き換えることではありません。

担当者が顧客の経営相談に使える時間を増やすことです。

小さく始めるなら

最初に取り組む顧客は、処理が一番複雑な会社ではなく、毎月の流れが安定している会社がおすすめです。

安定している顧客であれば、AI下書きの良し悪しを判断しやすく、担当者も不安なく試せます。

まず3社だけ選ぶ。

前月の報告書をもとに下書きを作る。

担当者が修正した部分を記録する。

この流れを2カ月続けると、AIに任せてよい部分と、人間が必ず見る部分がはっきりします。

導入初期は、短縮時間よりも「修正すべき箇所が予測できる状態」を作ることが重要です。

気になる業務があれば、お気軽にお声がけください。

弊社では中小企業のAI活用・システム開発の伴走支援を行っています。

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従業員12名の税理士事務所/月次報告を翌月20日から10日に早めた話についてよくある質問

同じような業務改善やAI活用は相談できますか?

はい。業種や従業員規模が違っても、業務の棚卸し、入力画面、集計、AI下書き、運用定着まで相談できます。最初は小さな業務から始める前提で整理します。

既存のGoogleフォームやスプレッドシートから始められますか?

可能です。いきなり大きなシステムを作るのではなく、既存ツールで流れを整え、必要に応じて社内ポータルや業務システムへ広げる進め方を取れます。

AIに判断を任せる形になりますか?

判断をAIに丸投げする形にはしません。AIは下書き、分類、確認観点の整理に使い、最終判断や対外的な説明は人が確認する運用にします。