従業員22名の印刷会社/提案資料4時間を1時間に減らした事例
製造業・印刷業 × 社長と営業担当 × 従業員22名(関西)の事例

印刷会社の営業では、同じ「パンフレットを作りたい」という相談でも提案内容が変わります。採用に使うのか、展示会で配るのか、既存顧客へ送るのか。部数、用紙、加工、納期、予算まで考え、顧客ごとに資料を作らなければなりません。

この印刷会社では、提案資料の作成に平均4時間かかり、営業担当の仕事の約60%を提案準備が占めていました。ベテランは顧客の言葉から目的を読み取れますが、新人の提案品質はベテランの70%程度。受注率は35%で、修正依頼が入るたびに資料を作り直していました。

そこで、過去の成功提案、顧客の業種、用途、予算、印刷方法を整理し、業務用に調整したAIが提案の骨組みと文章の下書きを作る仕組みを導入しました。担当者は顧客との対話と最終判断に集中し、AIは情報整理と繰り返し作業を支援します。

結果として、提案資料の作成は4時間から1時間へ短縮。受注率は35%から44%へ上がり、新人の提案品質はベテランの70%から95%相当まで改善しました。営業活動に使える時間も週15時間から28時間へ増えています。

※掲載数値はマスターCSVに記録された当該事例の実績値です。「提案品質95%相当」は社内評価によるもので、すべての提案が同じ結果になることを保証する数値ではありません。

課題:資料を作るほど、顧客と話す時間が減っていた

導入前は、顧客への聞き取り、要望整理、仕様検討、見積もり、提案資料作成を営業担当が一人で抱えていました。資料を丁寧に作ろうとすると半日、複雑な案件では丸一日かかることもあります。

社長は「提案資料を作るために、営業へ出る時間が取れない」と感じていました。若手担当者からは「どこまで説明すれば顧客に伝わるのか分からない」という声が出ていました。

印刷の知識だけでも提案は完成しません。顧客が本当に欲しいのは、冊子やチラシそのものではなく、採用応募を増やす、問い合わせを得る、商品を理解してもらうといった成果です。目的を聞き取れず、いきなり用紙や部数の話をすると、価格比較だけになりやすくなります。

一方、ベテランは過去の似た案件を思い出し、「この業種なら写真を多くする」「この用途なら持ち帰りやすい大きさにする」と組み立てられます。しかし、その判断は個人の頭の中にあり、新人が同じ質へ到達するまで時間がかかっていました。

さらに、初回提案で前提がずれると修正が増えます。文章、構成、仕様、見積もりを別々に直し、週8時間ほどを資料修正に使っていました。

施策:成功提案を分解し、営業が確認できる型にした

今回の狙いは、どの顧客にも同じ資料を送ることではありません。顧客ごとの違いを保ちながら、毎回ゼロから考えていた共通部分を整えることでした。

ステップ1:過去の成功提案を用途別に整理する

まず、過去の提案書を顧客業種、目的、制作物、予算帯、納期、受注結果で分類しました。採用案内、会社案内、商品カタログ、展示会配布物など、用途ごとに顧客が重視した点をまとめます。

受注した資料だけでなく、失注や修正が多かった提案も確認しました。「価格の説明が先で目的が見えなかった」「仕様の選択肢が多すぎた」といった理由は、次の提案を直す材料になります。

ステップ2:聞き取り項目をそろえる

営業担当が確認する項目を、目的、対象者、配布場面、希望納期、予算、必要部数、既存素材、決裁者の順に整理しました。顧客の言葉をそのまま記録する欄と、担当者の見立てを分けます。

入力項目を増やしすぎると、聞き取りが尋問のようになります。会話の流れは営業担当に任せ、提案の前提として欠かせない内容だけを確認する設計にしました。

ステップ3:AIが提案の骨組みと不足情報を出す

聞き取り内容を入力すると、業務用に調整したAIが、提案の目的、推奨する構成、仕様候補、期待できる使い方、確認が必要な点を下書きします。過去の似た案件も表示し、担当者が参考にした根拠を確かめられるようにしました。

AIが勝手に価格や納期を確定することはありません。最新の資材価格、工場の空き状況、外注工程は担当者が確認します。顧客の要望と異なる提案が出た場合は、採用せず修正します。

ステップ4:会社の提案書へ自動で整える

確認済みの内容を、会社で使っている提案書の型へ反映しました。表紙、課題整理、提案内容、仕様、進行予定、見積もり、次の確認事項を同じ順番に並べます。

文章を別の資料へコピーする回数を減らし、修正時も元の情報を直せば関連する箇所を更新できるようにしました。担当者は体裁を整える時間より、提案の中身を確認する時間を使えます。

ステップ5:受注後の反応を次の提案へ戻す

受注・失注、顧客の評価、修正回数を提案履歴に残しました。「どの説明が決め手になったか」「何が不足していたか」を短く記録し、月に一度営業チームで確認します。

AIの下書きも、現場の評価をもとに調整しました。便利な文章を大量に作るのではなく、受注につながった考え方を共有することが目的です。

成果:提案準備を減らし、営業活動を増やせた

項目BeforeAfter変化
提案資料作成4時間/件1時間/件3時間削減(75%)
提案作成業務週20時間週7時間週13時間削減
営業活動時間週15時間週28時間週13時間増加
資料修正週8時間週2時間週6時間削減
受注率35%44%9ポイント向上
新人の提案品質ベテランの70%相当95%相当25ポイント向上

提案資料を作る時間が4分の1になったことで、営業担当は顧客訪問、相談内容の深掘り、提案後の確認へ時間を使えるようになりました。週の営業活動時間は15時間から28時間へ増えています。

受注率は35%から44%になりました。AIが営業を代行したのではありません。初回の聞き取り項目がそろい、提案の目的と根拠を説明しやすくなり、顧客との対話に使う時間が増えた結果です。

新人の提案品質も改善しました。完成済みの文章をそのまま使うのではなく、過去の成功例と確認項目を見ながら提案を組み立てるため、「なぜこの仕様を勧めるのか」を学びやすくなりました。ベテランは文章の直しより、判断の理由を教えることに集中できます。

なぜ効果が出たのか

1.提案書より先に、聞き取りを整えた

入力情報が不足したままでは、どれだけきれいな資料を作っても修正が増えます。顧客の目的、対象者、使う場面を先に確認したことで、初回提案のずれを減らせました。

2.ベテランの提案を「型」と「理由」に分けた

見た目のテンプレートだけでなく、どの条件で何を提案したかを残しました。新人は文章をまねるのではなく、判断の流れを学べます。

3.AIを下書き担当に限定した

顧客との約束、価格、納期、最終仕様は人が決めます。AIに任せる範囲を情報整理と文章の下書きへ限定したことで、速さと責任の線引きを両立しました。

デザイン会社、Web制作、設備工事、士業にも応用できる

  • デザイン会社:目的、媒体、納期、修正範囲をそろえて提案の骨組みを作る
  • Web制作会社:サイトの役割、対象者、必要機能を整理し、見積もり前提を共有
  • 設備工事会社:現場条件、工事範囲、保守内容を確認し、提案漏れを減らす
  • 士業:相談内容、必要手続き、顧客側の準備物を案件別に整理

共通するのは、顧客ごとに個別提案が必要でありながら、確認項目や資料構成には繰り返しがあることです。まず過去10件ほどの提案を並べ、毎回確認している項目を見つけるところから始められます。

情報管理:顧客情報と営業秘密を守る

提案資料には、顧客の未公開商品、予算、販売計画、担当者情報が含まれることがあります。外部AIを使う場合は、入力内容が学習へ使われるか、保存期間はどうなっているか、契約と管理設定を確認しなければなりません。

顧客名を伏せて下書きを作る、閲覧権限を営業担当と管理者に限定する、退職者の権限をすぐ外す、生成された文章の操作履歴を残すといった対策が必要です。顧客から預かった情報を、便利さだけを理由に広く共有しない運用が前提です。

まとめ:提案の速さは、資料作成より「情報のそろえ方」で決まる

この印刷会社では、提案資料作成を4時間から1時間へ減らし、受注率を35%から44%へ改善しました。成果の中心は、AIに文章を書かせたことではありません。顧客への聞き取り、過去の成功例、提案の根拠を一つの流れに整理したことです。

AIは、そろった情報から下書きを作るのが得意です。しかし、顧客の表情を読み、優先順位を決め、約束するのは営業担当です。役割を分けることで、少人数の営業チームでも提案の量と質を両立できます。

気になる業務があれば、お気軽にお声がけください。弊社では、中小企業のAI活用・業務システムづくりを、営業現場への定着まで含めて伴走支援しています。

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