事務用品商社/RPAで年間約2,000時間を削減し、チーム営業を強化した話
卸売・小売業 × 営業DX・RPA × 札幌市の公開事例

「担当者が休むと、そのお客様のことが分からない」

中小企業の営業現場で、よく起きる困りごとです。顧客との会話、見積の経緯、次に提案したい商品が、営業担当者の手帳や記憶の中にあります。本人は仕事を把握していても、会社としては顧客情報を使えません。

北海道札幌市で事務用品やOA機器、オフィス関連サービスを扱う株式会社三城も、かつては紙やExcelで営業日報と顧客情報を管理していました。担当者ごとに分かれていた情報を、会社で共有して使える状態へ変えています。

同社はSFA・CRM・MAを連携し、個人営業から部門横断のチーム営業へ移行しました。さらに約40台のソフトウェアロボットで定型業務を自動化し、年間約2,000時間を削減。顧客企業へのDX支援受注は、2022年度の272件から2025年度の617件へ増えています。

本記事は同社の公開資料をもとに整理した解説であり、当社の支援実績を示すものではありません。公開値と、当社による読み解きを分けて紹介します。

単なる「営業管理ツール導入」ではありません。情報の持ち方、営業の役割、顧客との接点を順番に見直した事例です。

課題:紙の日報はあっても、会社の知識になっていなかった

同社の公開事例によると、2008年頃まで営業日報は紙でした。紙の日報には記入できる量が限られ、顧客との会話や案件の背景を十分に残せません。

回覧先も、自部署の上長と社長が中心でした。他部署の人は、別の営業担当が何を提案し、顧客が何に困っているかを知る機会が少ない状態です。

この状況では、次の問題が起きます。

  • 営業担当が替わると、過去の経緯を一から聞き直す
  • 他部署に似た経験があっても、見つけられない
  • 見積や提案の進み具合を、会議や電話で確認する
  • 長期間訪問できていない顧客へ、継続的に情報を届けにくい
  • 営業の得意・不得意が、そのまま会社の成果差になる

「営業は個人の仕事」という考え方では、担当者が優秀なほど情報がその人へ集中します。短期的には速く見えても、人数が増えたり、扱う商品が増えたりすると限界が来ます。

同社は事業承継をきっかけに、社内情報のデータ化が遅れていることを認識し、仕事の進め方を見直しました。

施策:顧客情報を集めるだけでなく、営業の流れを作り直した

ステップ1:顧客・案件・営業活動を一つにまとめる

最初に行ったのは、顧客名簿だけを電子化することではありません。

顧客情報、案件情報、営業活動、社内の知識を一つの場所へ集めました。誰が見ても「この顧客に何を提案したか」「次は何を確認するか」が分かる状態を作ります。

難しい言葉では、顧客管理や営業支援の仕組みと呼ばれます。現場の言葉にすると、営業の記録を会社全体で探せるようにしたということです。

ステップ2:日報を報告書ではなく、次の提案材料へ変える

日報は、上司へ提出して終わるものになりがちです。同社は日報と案件の記録を共有し、他部署の知識を次の提案へ使えるようにしました。

例えば、複合機を提案する営業担当が、別部署のセキュリティ対策やオフィス移転の知識を組み合わせられます。担当者一人が全商品に詳しくなる必要はありません。社内の詳しい人と情報をつなぎ、チームで顧客へ対応します。

ステップ3:顧客の段階に合わせた接点を作る

同社はインサイドセールスを設け、2020年にはマーケティング推進課を立ち上げました。SFA・CRMにMAを連携し、メールの開封やWeb閲覧などの行動データも営業活動へ生かしています。

マーケティング、インサイドセールス、フィールドセールス、カスタマーサポートが同じ顧客情報を見て、関心度と課題に応じて役割をつなぐ「THE MODEL型」の体制です。

ステップ4:繰り返し作業を自動で流す

顧客情報や案件情報が同じ場所に集まると、入力した内容を別の表へ書き直す必要が減ります。同社では約40台のソフトウェアロボットが定型事務や反復入力を担い、年間約2,000時間の業務削減につなげています。

ここでも大切なのは、先に仕事の流れを整理することです。古い手順をそのまま自動化すると、不要な確認や二重入力まで残ります。

ステップ5:自社で得た経験を、新しい支援事業へ広げる

同社は、自社で使った仕組みと改善経験を地域企業向けの支援事業へ広げました。

事務用品を売る会社から、顧客の経営課題を一緒に整理する会社へ。業務改善は、社内の時間削減だけでなく、新しい売上の柱にもつながりました。

成果:自動化で年2,000時間を削減し、DX支援の受注を拡大

同社の公式DX事例ページでは、2022年度から2025年度のKPIと現在の自動化実績が公開されています。

指標公開値対象
RPAによる業務削減約40台・年間約2,000時間定型事務・反復入力
顧客企業へのDX支援受注272件 → 617件2022年度 → 2025年度
SaaSソリューション支援の粗利益28,850,784円 → 60,305,734円2022年度 → 2025年度
マーケティング・インサイドセールス経由の協業支援粗利益263,934円・11社 → 4,004,630円・20社2022年度 → 2025年度
営業利益86,817,000円 → 164,980,819円2022年度 → 2025年度

年間約2,000時間は、RPAによる業務時間の削減値です。移動時間の削減値ではありません。対象を正しく区別することで、自社の改善候補と比較しやすくなります。

また、受注件数、粗利益、営業利益はそれぞれ定義が異なる指標です。RPAだけが利益増加の原因だと断定することはできません。顧客情報の共有、部門連携、MA、営業体制の変更、自動化を組み合わせた期間全体の成果として読み取る必要があります。

なぜ効果が出たか:ツールより先に「個人営業」を見直した

この事例のポイントは、顧客管理の仕組みを入れたことだけではありません。

効果が出た理由は、次の4点です。

  1. 紙の日報を電子化するだけでなく、顧客・案件・知識を一緒にした
  2. 営業担当一人で抱えず、他部署の知識を使うチーム営業へ変えた
  3. マーケティング、インサイドセールス、フィールドセールス、顧客支援をつないだ
  4. 自社の改善経験を、顧客向けの支援サービスへ育てた

営業管理の仕組みを導入しても、入力だけ増えて定着しない会社があります。現場から見ると、「会社のために報告する作業」が一つ増えただけだからです。

一方、入力した情報が次の提案に使われ、他部署から助言が届き、進捗確認や転記が減れば、現場にも利点があります。使う人が楽になる流れを作ったことが、定着につながりました。

他の業種でも応用できる

担当者ごとに顧客情報が分かれている会社なら、同じ考え方を使えます。

  • 建設業:顧客、工事案件、見積、写真、協力会社の情報を結ぶ
  • 製造業:問い合わせ、試作、見積、品質対応の履歴を共有する
  • 士業・コンサル業:相談内容、提出物、期限、過去の回答例をまとめる
  • 介護・福祉:利用者対応、家族連絡、申し送り、請求予定をつなぐ
  • 小売・サービス業:問い合わせ、購入履歴、予約、次回提案を共有する

最初から全社の情報を移す必要はありません。まず一つの営業チーム、一つの商品群、一つの顧客層に絞り、記録項目をそろえる方が安全です。

まとめ:営業情報は、担当者の所有物ではなく会社の資産

この商社が変えたのは、紙を画面に置き換えることだけではありませんでした。

顧客情報と営業ノウハウを会社の共有資産へ移し、個人営業を部門横断のチーム営業へ変え、定型作業をRPAへ移した。その結果、年間約2,000時間を削減し、顧客企業へのDX支援受注は2022年度272件から2025年度617件へ増えました。

「担当者がいないと案件が分からない」「営業会議が進捗確認だけで終わる」という状況があれば、まず情報の置き場所と記録項目を整理する価値があります。

気になる業務があれば、お気軽にお声がけください。弊社では、顧客情報や案件情報を一つにまとめ、現場で無理なく使い続けられる仕組みづくりを支援しています。

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出典・参考資料

この記事の作成にあたり参照した公開情報です。リンク先の事実と、当社による整理・解説を区別してご確認いただけます。

  1. 株式会社三城「DX事例紹介」 tokusetsu.sanjoh.ne.jp
  2. 株式会社三城「DXツール」 tokusetsu.sanjoh.ne.jp
  3. NIコンサルティング 導入・成功事例「株式会社三城」 salesforce-assistant.com