飲食・サービス業 × ネイルサロンの経営・管理職 × 従業員20名
中国地方のサロンにおける、予約・顧客メモ・売上集計をまとめた支援事例です。現場の声はヒアリング内容を分かりやすく再構成しています。
課題:予約が入るたびに、3つの場所を見直していた
このネイルサロンでは、予約の受付そのものはできていました。
問題は、その後です。
予約日時はカレンダー。お客様の希望デザインや過去の施術内容は紙のカルテ。来店後の売上は別の表計算ファイル。電話やSNSのメッセージで変更が入ると、担当者がそれぞれの場所を直していました。
経営者の言葉を要約すると、次のような状況です。
「予約は取れているのに、確認に時間がかかります。スタッフから『この方の前回の色は何でしたか』『変更はカレンダーにも反映されていますか』と聞かれるたびに、手を止めていました」
予約管理にかかる時間は、営業日あたり約3時間。
お客様が来店してから過去の情報を確認する時間は、1回あたり約8分。月末には複数の記録を突き合わせる売上集計に約16時間かかっていました。
忙しい日は、情報を直す順番が前後します。
カレンダーは新しいが紙のメモは古い。あるいは、来店記録は残っているが担当スタッフの共有欄には反映されていない。情報の食い違いを見つける作業が、さらに確認時間を増やしていました。
当時の主な負担
- 予約変更のたびに複数の記録を直す
- 担当者が休みだと、前回の施術内容を探すのに時間がかかる
- 売上集計の形式がスタッフごとに少しずつ違う
- SNSからの問い合わせと来店後の記録がつながらない
- 確認作業に追われ、提案や接客の準備が後回しになる
大切にしたのは、現在のやり方を否定しないことでした。
紙のメモには、現場で素早く書ける良さがあります。カレンダーにも、空き時間を一目で把握できる良さがあります。そこで、全部を一度に置き換えるのではなく、「二重に書いている部分」だけを減らすところから始めました。
施策:予約から月次集計まで、同じ情報を使える流れにした
ステップ1:入力項目を絞った
最初に、予約時に本当に必要な項目をスタッフと一緒に整理しました。
氏名、希望日時、施術メニュー、担当希望、連絡方法、注意事項。
何でも入力できる自由記述欄は便利ですが、書き方がばらばらになり、後で集計できません。そこで、施術メニューや担当者は選択式にし、補足だけを短い自由記述にしました。
お客様の情報をAIへそのまま渡す設計にはしていません。AIを使う場合も、個人を特定する情報や施術上の機微な情報を除き、接客文の下書きや文章の整え方など、範囲を限定しました。最終送信はスタッフが確認します。
ステップ2:一度入力した内容を一覧へ反映した
予約用の入力画面から送られた内容が、スタッフ用の一覧へ自動で追加されるようにしました。
ここで使ったのは、スプレッドシートを自動で動かす仕組みです。
難しい画面を新しく覚えるのではなく、普段から見慣れている一覧を中心にしました。変更があった時は、元の予約番号を使って対象行を見つけます。これにより、同じ内容をカレンダー、紙、表へ何度も書き直す回数を減らしました。
ステップ3:来店前に必要な情報だけ見えるようにした
スタッフが欲しいのは、お客様の全履歴ではありません。
次の予約、担当、前回の施術、注意事項、今回の希望。
来店前の確認画面には、この5点だけを表示しました。詳しい履歴は必要な時だけ開きます。
「全部を一画面に出すより、今日見る情報だけの方が助かります」
現場から出たこの意見を反映し、画面の項目を減らしました。情報を増やすことより、迷わず見つけられることを優先した形です。
ステップ4:月次集計を同じ記録から作った
来店後に、施術メニュー、担当、売上、次回予約の有無を入力します。
その記録を使い、月次売上、メニュー別の件数、担当別の状況を自動で集計しました。別の表へ転記する作業をなくし、経営者は集計結果の確認と例外だけを見ればよい状態にしました。
数字が合わない時に備え、元の来店記録へ戻れるようにもしています。自動集計を正しいと決めつけず、人が確認できる道を残すことが重要です。
成果:予約管理は3時間から45分、月次集計は16時間から2時間へ
導入後の変化は次の通りです。
| 項目 | Before | After | 変化 |
|---|---|---|---|
| 予約管理 | 3時間 | 45分 | 75%削減 |
| 顧客情報の確認 | 8分/回 | 2分/回 | 75%短縮 |
| 月次売上集計 | 16時間 | 2時間 | 約87%削減 |
| リピート率 | 25% | 42% | 17ポイント向上 |
| 顧客満足度 | 75% | 92% | 17ポイント向上 |
時間削減だけでなく、担当者が休みの日も必要な情報を確認しやすくなりました。
経営者は、月末に数字を作る作業から、どのメニューが選ばれているか、次回予約につながっていない場面はどこかを考える時間へ移れました。
現場の言葉を要約すると、次の変化です。
「探す時間が減ったので、来店前にお客様へ提案する色やデザインを考えられるようになりました」
この“考える時間が戻った”ことが、副次的な成果でした。
なぜ効果が出たか:予約システムを入れたからではない
効果が出た理由は、高機能なシステムを入れたことではありません。
一度入力した情報を、予約確認、接客準備、来店記録、売上集計で繰り返し使えるようにしたことです。
また、現場スタッフが入力しやすい項目数へ絞り、試しながら不要な欄を外しました。管理側だけで決めた仕組みではなく、日々使う人の声を反映したため、記録が続きました。
AIも主役にはしていません。
接客文や案内文の下書きを補助する一方、顧客情報の扱い、施術内容の判断、送信前の確認は人に残しました。便利さと安全な運用を分けて考えたことも、定着につながっています。
他の店舗型サービスにも応用できる
同じ考え方は、次の業種にも応用できます。
- 美容室:予約、施術履歴、次回来店の案内
- 整体・リラクゼーション:予約、担当、来店後フォロー
- パーソナルジム:予約、トレーニング記録、継続確認
- 写真館:撮影予約、衣装、納品状況
- 学習教室:出欠、連絡、面談記録
共通するのは、同じ情報を複数の場所へ書き直していることです。
まず一週間だけ、どの情報を何回転記しているか数えると、改善対象が見つかります。
まとめ:便利な機能より、同じ情報を二度書かない
この事例では、予約管理を3時間から45分へ、月次集計を16時間から2時間へ短縮しました。
ただし、数字だけをまねても同じ結果になるとは限りません。予約の入り方、スタッフ数、既存ツール、顧客情報の扱いに合わせて、入力項目と確認手順を調整する必要があります。
大切なのは、今の業務を活かしながら、二重入力と探す時間を一つずつ減らすことです。
気になる業務があれば、お気軽にお声がけください。
デジタルツール研究所では、中小企業のAI活用・業務システムづくりを、現場と一緒に段階的に進めています。