従業員8名の金属製品製造業/納期回答時間を90%削減した事例
金属製品製造業 × 案件管理・見積・納期回答 × 従業員8名/神奈川県

2023年版中小企業白書に掲載された、株式会社サーフ・エンジニアリングの事例です。

同社は、案件資料を紙で保管し、進捗と優先順位を担当者の記憶に頼っていました。従業員8名の会社では、一人が営業、見積、現場調整を兼ねることもあります。担当者が不在だと、顧客へ納期を答えられません。

そこで、紙の資料と頭の中の情報を案件管理アプリへ移し、現場で使いながら改善しました。

結果、見積作成時間45%削減、納期回答時間90%削減、納期調整依頼95%削減。年間約700件の新規見積依頼にも対応できる体制へ変わりました。

課題:案件が増えるほど、探す時間も増えていた

図面はある。でも、今どこまで進んでいるか分からない

案件ごとの図面や資料は紙で保管されていました。

過去に似た加工をしたか調べるには、保管場所から書類を探します。見つかっても、当時の見積条件や実際の進み方が一緒に残っているとは限りません。

現場では「この図面、前にもやった気がする」「担当者が戻るまで納期は答えられない」という会話が起きていました。

優先順位が担当者の頭の中にある

急ぎ案件、材料待ち、外注待ち、確認待ち。

どれを先に進めるかは、担当者の経験に支えられていました。朝の打ち合わせで共有しても、途中で新しい依頼が入れば状況は変わります。

一覧で見えないため、営業は現場へ何度も確認し、現場は作業を止めて答えていました。

新しい依頼を受けたいのに、納期を約束できない

顧客が知りたいのは「作れるか」と「いつできるか」です。

しかし、既存案件の負荷が見えないと、その場で回答できません。確認に時間が掛かるほど、受注機会を逃す可能性が高まります。

同社では、実際に新規案件を断る機会損失も起きていました。

施策:完成品を待たず、2〜3週間で最初の画面を使った

ステップ1:既製品で合わなかった理由を言葉にする

同社は最初から専用開発を選んだわけではありません。

Excel、既製の業務ソフト、プログラムを書かずに作れるツールも試しました。

その上で、「図面と案件を一緒に見たい」「現場の優先順位をその場で変えたい」「納期回答に必要な項目だけを出したい」という、自社に必要な条件が見えてきました。

ここが重要です。

合わない理由を整理せずに専用システムを発注すると、今の紙をそのまま画面へ移しただけになりがちです。

ステップ2:初版へ入れる機能を絞る

最初の画面に入れたのは、案件名、図面、進捗、納期、優先順位など、顧客回答に直結する情報です。

全機能を完成させるまで待ちませんでした。

ITベンダーと相談し、2〜3週間で最初のアプリを受け取っています。

現場担当者は「文章で説明するより、動く画面を触った方が不足がすぐ分かった」と感じたはずです。ボタンの位置、入力項目、一覧の並び。使って初めて見える課題を、その場で直しました。

ステップ3:約2か月で実運用へ移す

最初からすべての紙をなくすのではなく、進行中の案件から入力しました。

朝の打ち合わせではアプリの一覧を開き、優先順位を更新します。営業も同じ画面を見て、現場へ歩いて聞きに行かなくても状況を確認できるようにしました。

入力漏れがあれば、誰を責めるかではなく「入力しにくい場所はどこか」を確認しました。

ステップ4:1年間で50回超、改善を続ける

同社は、導入後1年間で50回を超える改善を重ねました。

完成後に保守するのではなく、使いながら完成度を上げたのです。

改善要望は、顧客回答が早くなるか、入力回数が減るか、ミスが減るかの3基準で優先順位を付けます。

「便利そう」という理由だけでは追加しません。機能が増えすぎると、8名の会社では管理負担の方が大きくなるからです。

成果:探す・聞く・待つが減り、受注機会を取り戻した

公開事例で確認できる成果は次の通りです。

項目BeforeAfter変化
見積作成紙と過去資料を探して作成案件・図面を検索して作成時間45%削減
納期回答担当者・現場へ都度確認一覧から状況を確認時間90%削減
納期調整依頼個別連絡が頻発優先順位を共有95%削減
新規見積依頼対応余力が見えにくい年間約700件へ対応機会損失を縮小

納期回答が速くなると、営業だけが楽になるわけではありません。

現場への割り込み質問が減り、加工へ集中できます。顧客も回答待ちの時間が短くなります。経営者は案件量と負荷を同じ画面で見て、外注や残業の判断を早められます。

なぜ効果が出たか:目的を「紙をなくす」にしなかった

この事例の目的は、ペーパーレスではありませんでした。

顧客へ早く、正確に答えること。

その目的が共有されていたため、現場も改善を続けられました。

また、最初から仕様を固定しなかった点も大きいです。小さな試作を触り、直し、また試す。文章だけで完成形を決めるより、発注側と開発側の認識差を減らせます。

弊社が同様の支援を行う場合も、まず一つの画面を作り、現場の3〜5名に使ってもらいます。動くものを見ながら「必要」「不要」「後で」を分ける方が、結果的に早く定着します。

他の業種でも応用できる

  • 設備工事業:現場写真、見積、職人の空き状況を案件ごとにまとめる
  • 印刷業:校正、資材、印刷、納品の進捗を一画面で共有する
  • 修理業:受付、部品待ち、作業、引き渡しを追えるようにする
  • 受注生産業:図面、材料、工程、納期を案件番号でつなぐ

共通する第一歩は、顧客へ回答する時に何を探しているかを記録することです。

1週間、質問された内容と探した場所をメモするだけでも、最初の画面に必要な項目が見えてきます。

システム発注前に決めておきたいこと

専用システムは、作った後にも費用と判断が続きます。保守の範囲、軽微な修正と追加開発の境界、障害時の連絡先、データを書き出せる形式を契約前に確認します。

また、改善要望を一人の声だけで決めないことも大切です。営業、現場、経営から一人ずつ参加し、「顧客回答が早くなるか」を共通の判断軸にします。

月1回、使われていない項目や二重入力を確認し、増やすだけでなく削る改善も行います。50回を超える改善は、50個の機能を足すという意味ではありません。現場に合わない操作を減らし続けた結果でもあります。

小さく、長く直す姿勢が重要です。


気になる業務があれば、お気軽にお声がけください。弊社では中小企業のAI活用・システム開発の伴走支援を行っています。

無料相談はこちら