プラスチック製品製造業 × 生産管理 × 従業員約60名
※IPAが2025年7月22日に公開した岡田電機工業株式会社の事例をもとに、弊社が同規模企業を支援する場合の進め方として再構成しています。弊社自身の支援実績を示す記事ではありません。
横須賀市のプラスチック製品メーカーでは、工場が日曜日を除いて24時間稼働しています。現場では作業日報を手書きし、その後に表計算へ入力して集計していました。
結果が分かるまで3〜4日。時間のかかった案件が見つかっても、その日のうちに手順や指導を見直せませんでした。
同社は、作業の開始と終了をスマートフォンで読み取り、日報を自動で作る独自システムを開発しました。作業終了5分後には集計結果を確認できる状態へ変えています。
課題:記録はあるのに、改善へ使うには遅かった
紙の日報には大切な情報が残っています。しかし、書いた内容を別の人が表へ入力し直すと、二重作業になります。
集計に3〜4日かかると、現場の記憶も薄れます。「なぜこの作業だけ時間がかかったのか」と聞いても、材料、段取り、設備、担当者のどこに原因があったかを振り返りにくくなります。
事例から見える課題は次の通りです。
- 作業者が紙へ書き、管理側がもう一度入力する
- 集計が出る頃には次の生産へ進んでいる
- 時間のかかった案件をすぐ見つけられない
- 改善指導のタイミングが遅れる
- システム担当が少なく、運用を複雑にできない
ITの専任部署はなく、生産本部長と社員1名の2名体制でした。大企業のような人数を置かず、外部の開発会社や機器会社の力も借りています。
施策:入力時間ではなく「改善までの時間」を縮める
この事例の重要な点は、紙を画面へ置き換えただけではないことです。日報ができる速度を、現場改善へつながる速度まで短縮しました。
ステップ1:日報の目的を決め直す
最初に確認したいのは、「日報を保存するため」なのか「作業を改善するため」なのかです。
改善に使うなら、作業名、開始、終了、数量、停止理由など、判断に必要な項目をそろえます。自由記述を増やしすぎず、現場が迷わず記録できる形へ絞ります。
ステップ2:開始と終了をその場で記録する
同社の仕組みでは、作業開始時と終了時にスマートフォンでQRコードを読み取ります。これにより、後から記憶を頼りに時間を書く必要が減ります。
弊社が支援する場合も、現場の手袋、通信状況、端末の置き場所を確認します。机上で入力しやすくても、現場で使いにくければ定着しません。
ステップ3:遅い案件から確認できる一覧を作る
すべての数字を眺めるのではなく、想定より時間がかかった案件を上から確認できるようにします。
同社では作業終了5分後に集計し、生産性の低い案件を一覧にできます。管理者は、手順を変えるべきか、指導が必要か、設備や材料に問題があるかを早く確認できます。
ステップ4:現場への返し方を決める
数字を集めても、現場へ戻さなければ改善は進みません。朝礼、班の打ち合わせ、個別指導など、誰がいつ確認し、何を変えたかを残します。
「遅かった人を責める表」にしないことも大切です。段取り不足や指示の分かりにくさを見つけるための材料として扱います。
ステップ5:外へ提供する前に安全対策を整える
同社は独自システムを外部へ販売する段階で、ウイルス対策、ネットワークの監視、インターネット上のバックアップを強化しました。
自社内だけで使うときより、顧客から預かるデータやシステム停止の影響が大きくなるためです。開発と安全対策を別々に考えず、信頼を支える一つの設計として扱っています。
導入効果を測る4つの数字
一つ目は、作業者が日報を書く時間です。二つ目は、管理側が表へ入力し直す時間です。三つ目は、作業終了から集計結果が出るまでの時間です。四つ目は、問題を見つけて改善へ着手するまでの時間です。
この4つを分けると、入力だけが速くなったのか、管理側の仕事も減ったのか、現場改善まで早くなったのかを判断できます。
さらに、記録漏れ、修正回数、ネットワークが使えないときの記録方法も確認します。平均時間だけでは、現場の例外を見落とすためです。
数字は、同じ工程、同じ期間、近い生産量で比較します。繁忙期と閑散期をそのまま比べると、仕組みの効果と受注量の影響が混ざります。
成果:3〜4日後の集計が、作業終了5分後になった
| 項目 | Before | After |
|---|---|---|
| 日報の記録 | 手書き | 開始・終了時にスマホで読取 |
| 表への入力 | 人が再入力 | 自動で日報作成 |
| 集計結果 | 3〜4日後 | 作業終了5分後 |
| 改善対象の発見 | 全体集計後 | 時間のかかった案件から確認 |
| 運用体制 | 紙と表計算中心 | 社内2名+外部支援 |
最大の成果は、記録時間の短縮だけではありません。問題が起きた仕事を、現場の記憶が新しいうちに振り返れるようになったことです。
また、自社の困りごとから作った仕組みを外へ提供する事業にもつながりました。現場の改善と新しい売上の可能性を同時に生んだ点も特徴です。
なぜ効果が出たか:紙をなくすことを目的にしなかった
「紙をデジタルにする」だけなら、入力場所が変わるだけで終わることがあります。
この事例では、改善対象を見つけるまでの時間を3〜4日から5分へ縮めるという、使い道が明確でした。だから必要な入力項目と一覧の形を決められました。
さらに、社内だけで抱え込まず、開発は外部へ委託し、機器会社にも相談しています。専任者が少ない中小企業にとって、社内は業務の判断、外部は技術と安全対策を支える役割分担が現実的です。
他の製造現場でも応用できる
この考え方は、組立、検査、梱包、設備点検、出荷準備にも応用できます。
最初から全工程を対象にする必要はありません。一つの工程で、記録時間、再入力時間、集計までの日数、改善着手までの時間を測ります。
効果が確認できたら、隣の工程へ広げます。現場の声を聞きながら入力項目を減らすことも、長く使うために欠かせません。
専任部署がなくても止めない運用
社内の2名だけに知識を閉じ込めないため、端末、読み取り用の印、集計の確認方法、障害時の連絡先を手順書へ残します。
毎月一度、担当者ではない人が手順を見て日報を確認できるか試します。外部の開発会社へ連絡するときも、発生時刻、対象工程、画面の状態を同じ形式で伝えられるようにします。
システムが止まった場合の紙の記録方法も残します。自動化したから紙を完全に禁止するのではなく、復旧後にどのように取り込むかまで決めておくと、24時間動く工場でも業務を止めにくくなります。
まとめ:日報は「残す紙」から「今日直す材料」へ
手書き日報の課題は、紙そのものではありません。記録が改善へ届くまでに時間がかかることです。
作業終了5分後に結果が見えれば、その日のうちに確認できます。中小企業の現場でも、目的を一つに絞り、社内と外部の役割を分ければ、無理のない形で始められます。
気になる業務があれば、お気軽にお声がけください。
弊社では中小企業のAI活用・システム開発の伴走支援を行っています。