運輸・物流業 × 梱包・包装業 × 運行管理者の事例
中部地域の従業員40名規模の会社で、配送状況確認と配車調整を見える化したケースです。
課題:荷物確認と配車調整に時間がかかり、顧客連絡が遅れていた
梱包・包装業では、配送そのものだけでなく、荷物の確認、出荷状況、車両手配、顧客連絡、請求のための記録まで、多くの情報が動きます。
今回の会社では、荷物の追跡に1回平均10分かかっていました。
配送スケジュールの調整は複雑で、残業が月30時間ほど発生。
請求書作成も月末に手作業で3日ほどかかっていました。
運行管理者の方は、こう話していました。
「お客様から聞かれても、すぐ答えられないことがありました。ドライバーに電話して、事務所で紙を探して、倉庫にも確認して、という流れでした」
現場側にも負担がありました。
「配送中に何度も確認の電話が来ると、正直集中しづらいです」
問題は、誰かがさぼっていたことではありません。
配送に関する情報が、事務所、倉庫、ドライバー、顧客連絡で分かれていたことです。
施策:配送情報の入口をそろえ、確認の手順を短くした
今回の支援では、配送管理を一気に大きな専用システムへ置き換えるのではなく、まず確認に時間がかかる部分を整理しました。
ステップ1:配送状況を入力する画面を作る
Googleフォームで、配送状況を入力する画面を作りました。
荷物番号、配送先、担当ドライバー、出発時刻、到着予定、遅延理由、完了報告、写真添付。
これらをスマホから入力できるようにしました。
ドライバーに負担がかからないよう、選択式を中心にしました。
文章入力は、遅延理由や特記事項だけに絞りました。
ステップ2:一覧で配送状態を確認できるようにする
入力された情報は、スプレッドシートに自動で集まるようにしました。
未出発。
配送中。
遅延あり。
完了。
顧客連絡が必要。
状態ごとに見やすく分け、運行管理者が電話をかける前に状況を確認できるようにしました。
専門的にはGASを使っていますが、現場では「入力された配送情報が自動で整理される仕組み」と説明しました。
ステップ3:顧客連絡と振り返りにAIを使う
ChatGPTは、顧客連絡文の下書きや、配送トラブルの振り返りメモに使いました。
遅延理由を丁寧な文章に整える。
クレーム対応の記録を要約する。
週次で多かった遅延理由を整理する。
改善会議用のたたき台を作る。
AIは配送判断をする役割ではありません。
運行管理者が、早く正確に状況を伝えるための補助です。
成果:配送確認10分が2分になり、配送精度も95%へ向上
導入後、配送状況の確認にかかる時間が大きく減りました。
| 項目 | Before | After |
|---|---|---|
| 荷物追跡時間 | 1回10分 | 1回2分 |
| 配送調整時間 | 2.5時間 | 60分 |
| 配送精度 | 88% | 95% |
| 配送効率 | 基準値 | 40%向上 |
| クレーム対応 | 週5時間 | 週2時間 |
運行管理者の方からは、こんな声がありました。
「電話する前に状況が分かるので、確認の順番が変わりました。お客様への返答も早くなりました」
ドライバー側にも変化がありました。
「必要な時だけ連絡が来るようになったので、配送に集中しやすいです」
情報が見えるようになると、単に事務時間が減るだけではありません。
顧客への返答が早くなり、現場の心理的な負担も下がります。
なぜ効果が出たか:配送の全部ではなく、確認作業から整えたから
物流の仕組みを改善しようとすると、最初から大きな配送管理システムを想像しがちです。
もちろん、規模が大きくなれば専用システムが必要な場面もあります。
でも中小企業では、いきなり大規模に変えるより、確認に時間がかかっている部分を先に整える方が効果が出やすいです。
今回も、最初に変えたのは確認作業でした。
どこにあるか。
誰が持っているか。
遅れているか。
顧客へ連絡が必要か。
この4つがすぐ見えるだけで、業務の流れは大きく変わります。
導入時に注意したこと:ドライバーの入力を増やしすぎない
物流現場で仕組みを作る時に失敗しやすいのは、入力項目を増やしすぎることです。
管理側は、できるだけ多くの情報を取りたくなります。
でも配送中のドライバーにとって、入力が多い仕組みは負担です。
今回も最初の案では、細かい項目が多くなりすぎていました。
現場確認の中で、ドライバーからこう言われました。
「運転の合間に入れるので、選ぶだけで終わる形がいいです」
そこで、入力はステータス選択を中心にしました。
文章を書くのは、遅延理由や特記事項がある時だけ。
写真添付も、毎回ではなく必要な配送だけに限定しました。
現場が続けられる入力量にする。
これが、物流のデジタル化では特に重要です。
週次の振り返りで改善できるようになった
もう一つの変化は、週次の振り返りです。
以前は、配送トラブルが起きても、その場で対応して終わることが多くありました。
導入後は、遅延理由やクレーム内容が一覧に残ります。
そのため、週1回の短いミーティングで確認できるようになりました。
どのエリアで遅延が多いか。
どの時間帯に確認電話が増えるか。
どの顧客で連絡漏れが起きやすいか。
ドライバーからの報告で多い困りごとは何か。
こうした情報をもとに、配送ルートや顧客連絡のタイミングを少しずつ見直しました。
大きな改革ではありません。
でも、毎週少しずつ改善できる状態になったことが大きな成果でした。
他の物流・現場業務にも応用できる
同じ考え方は、梱包・包装業だけではありません。
食品配送。
建材配送。
倉庫内ピッキング。
訪問サービスの巡回。
設備工事の現場移動。
現場で起きたことをスマホで入力し、事務所側が一覧で確認できるようにする。
それだけで、電話確認、探す時間、報告漏れは減らせます。
大事なのは、現場に負担を増やさないことです。
入力項目を絞り、使う人が迷わない形にする。
そこから始めれば、物流のデジタル化は小さく進められます。
最初の対象は、全配送ではなく、問い合わせが多い顧客、遅延が起きやすいエリア、確認電話が多い時間帯に絞っても構いません。
範囲を絞れば、現場への説明も短く済み、効果も見えやすくなります。
小さな成功が出ると、ドライバー側から「この報告も入れたい」と改善案が出るようになります。
その段階で項目を増やせば、管理側の都合ではなく現場から必要とされた仕組みとして育てられます。
気になる業務があれば、お気軽にお声がけください。
弊社では中小企業のAI活用・システム開発の伴走支援を行っています。