従業員22名のラベル印刷会社/受注入力を1日約50点から約300点へ
工業用ラベル印刷業 × 営業・受注担当 × 従業員22名の公開事例

※本記事は東京商工会議所が公開する株式会社タック印刷の事例を、中小企業が応用しやすい手順に整理したものです。弊社の支援実績として紹介するものではありません。

課題:注文が増えるほど「安心して受けられない」

工業用ラベルは、製品ごとに材質、形、表示内容、納期が異なります。

注文が増えること自体は喜ばしい一方、伝票入力や仕様変更の連絡が人の手に集中すると、現場は受注量に追い付けません。

公開事例では、以前は1日かけても受注入力はせいぜい約50点でした。注文が重なると、営業が受けた変更情報を製造や在庫の担当へ伝えるだけでも時間がかかります。

状況を会話に置き換えると、次のような状態です。

「このラベル、納期が変わったと聞いたけれど、最新情報はどこですか」

「担当者のメモを確認しないと分かりません」

これは公開情報の要約であり、実際の発言を引用したものではありません。しかし、紙や口頭で受注を回す会社では起こりやすい場面です。

問題は入力速度だけではありませんでした。

  • 注文を受けても処理できるか不安になる
  • 仕様や納期の変更が担当者の中に残る
  • 販売、製造、在庫で同じ情報を見られない
  • 確認の往復が増え、退社時刻が遅くなる

ツールを一つ入れるだけでは、これらは同時に解決しません。

施策:部門ごとの課題を、段階的につないだ

同社は販売管理と生産管理を一度に全面刷新したのではなく、段階的に整えました。

ステップ1:受注情報を同じ形式で入力する

最初に、顧客、商品、数量、仕様、納期など、受注時に必要な情報をそろえます。

入力項目を増やしすぎると現場は使いません。逆に少なすぎると、後工程が電話で聞き直します。

大切なのは、営業が入力でき、製造が判断できる最小項目を決めることです。

専門用語で言えば販売管理ですが、現場では「注文の正本を一か所にする」と考えると分かりやすくなります。

ステップ2:製造の進み具合と変更情報をつなぐ

次に、受注した内容と生産の状況をつなぎました。

顧客から仕様や納期の変更が入った時、誰が連絡を受けても同じ情報を確認できる状態を作ります。

「営業へ聞かないと分からない」を減らし、データを見れば次の対応を判断できるようにする狙いです。

この時、システムを作る会社には印刷業の流れを理解する事業者を選びました。業界固有の受注単位や工程を一から説明する負担が減り、現場に合う形へ近づけやすくなります。

ステップ3:在庫や取引先とのデータ交換まで広げる

受注と生産が安定してから、在庫や取引先との情報交換へ対象を広げました。

ここで重要なのは、最初から全部をつながなかったことです。

受注入力、製造指示、在庫という順に、現場が効果を感じられる単位で進める。小さな成功が次の改善への抵抗を減らします。

ステップ4:変更履歴を「誰でも分かる」状態にする

システム化の価値は、入力件数だけではありません。

担当者が休んでいても、顧客の要望や変更内容を別の社員が確認できる。これにより、返答の速さと品質をそろえられます。

成果:受注入力は約6倍、ほぼ定時の運用へ

東京商工会議所の公開事例では、1日に約300点の注文が一気に入っても、業務を進められるようになったとされています。

以前の約50点と比べると、入力可能な件数は約6倍です。

さらに、ほぼ定時で仕事を終えられる運用へ変わりました。2021年度の売上は前年度比30%増の見込みと紹介されています。ただし、この売上変化は景況や受注回復など複数要因を含むため、システムだけの効果と断定はできません。

項目BeforeAfter
1日の受注入力せいぜい約50点約300点の注文にも対応
入力能力基準約6倍
退社時刻受注増で業務が逼迫ほぼ定時
仕様・納期変更担当者への確認が必要データから誰でも確認
2021年度売上前年度前年度比30%増の見込み

数字以上に大きいのは、「注文が増えるのが怖い」状態から抜けたことです。

処理能力が見えれば、営業は受注判断をしやすくなります。製造も、変更情報を早く確認できます。顧客への返答も担当者による差が小さくなります。

なぜ効果が出たか:入力作業ではなく、情報の流れを直した

この事例から学べるポイントは3つです。

1. 業界を理解する相手を選んだ

印刷業の受注は、単純な商品番号だけでは表せません。業務を理解する相手と組むことで、説明と作り直しを減らせます。

2. 一気に切り替えなかった

販売、生産、在庫を段階的につなぎました。現場が新しい流れに慣れる時間を確保できます。

3. 変更情報を全員が見られるようにした

受注入力を速くするだけでなく、変更履歴を共通化しました。これが顧客対応の標準化につながります。

他の業種へ横展開するなら

同じ考え方は、印刷業以外でも使えます。

  • 金属加工業:図面番号、材質、工程、納期を一元化
  • 食品製造業:注文、製造日、ロット、出荷先を接続
  • 卸売業:受注、在庫、仕入れ、配送予定を共有
  • 看板・広告制作業:仕様変更、校正履歴、制作進捗を記録

共通するのは、注文の種類が多く、変更連絡が頻繁なことです。

導入前にそろえる小さな台帳

同じ改善を始めるなら、最初の1週間で受注10件だけを追います。

記録するのは、受付時刻、入力完了時刻、確認の往復回数、仕様変更回数、製造へ渡した時刻です。いきなり全注文を移すのではなく、どこで待ち時間が発生するかを確かめます。

また、項目ごとに「誰が入力し、誰が確認し、いつ確定するか」を決めます。顧客からの電話を受けた時点では仮情報、承認後は確定情報というように状態を分けると、古い納期や仕様を誤って使う事故を減らせます。

さらに、例外も先に洗い出します。

  • 特急注文は誰が承認するか
  • 仕様変更後に製造を止める連絡はどうするか
  • 同じ品番で材質が違う場合をどう見分けるか
  • システムが使えない時の仮受付をどこへ残すか

通常の流れだけを画面にすると、忙しい日に紙へ戻ります。例外時の戻し方まで決めて初めて、現場で続く仕組みになります。

30日後に確認したい数字

導入効果は入力件数だけでなく、確認の往復、仕様変更の見落とし、回答までの時間、定時後の作業で見ます。受注が増えた月と少ない月を同じ件数で比べるため、1件当たりの時間も残します。

「システムを入れたから成功」ではなく、担当者が休んでも同じ返答ができるかまで確認します。

最初は「入力する画面」を作るだけでも構いません。ただし、その情報を誰が次に使うのかまで決める必要があります。

弊社では、AIや業務システムを単体で渡すのではなく、入力、確認、承認、引き継ぎまで含めて現場で続く形を一緒に整理します。

気になる業務があれば、お気軽にお声がけください。

無料相談はこちら