九州地方の地域家電量販店・営業担当・従業員15名の事例
課題:大型家電の見積が、毎回人の記憶に頼っていた
福岡県北九州市の地域家電量販店では、エアコン、冷蔵庫、洗濯機などの大型家電を扱っていました。
商品本体の価格だけでなく、配送費、設置工事費、下取り、長期保証、キャンペーン割引まで含めて見積を出す必要があります。
営業担当の方はこう話していました。
「冷蔵庫だけなら簡単なんです。でも、配送日、階段の有無、古い家電の引き取り、保証の有無が入ると、確認が一気に増えます」
見積1件に平均30分。月に80件ほど対応すると、見積だけで月40時間近くかかっていました。
さらに、手計算や確認漏れによる修正が月10件前後ありました。価格を出し直したり、お客様へ説明し直したりする時間も発生していました。
施策:価格表と確認項目を一つの流れにまとめた
弊社では、いきなり複雑なシステムを作るのではなく、まず見積の流れを整理しました。
ステップ1: 見積に必要な項目を洗い出す
商品カテゴリ、設置場所、配送エリア、階段の有無、下取り、保証、キャンペーン対象、支払い方法を一覧にしました。
営業担当ごとに聞いていることが少しずつ違っていたため、必ず確認する項目を固定しました。
ステップ2: 価格表と条件を整理する
スプレッドシート上に、商品価格、工事費、配送費、保証費、下取り条件をまとめました。
専門的に言えば情報をためておく場所を作った形ですが、現場には「見積に必要な数字をまとめた表」と説明しました。
ステップ3: AIへの指示文を用意する
お客様から聞いた内容を入力すると、AIが確認漏れを指摘し、見積の説明文を作る仕組みにしました。
ここで大事なのは、AIに金額を勝手に決めさせないことです。
金額は整理した表から出し、AIは説明文と確認漏れのチェックを担当します。
成果:30分の見積が5分に近づいた
導入後、見積作成の平均時間は30分から5分前後に短縮されました。
| 項目 | Before | After |
|---|---|---|
| 見積作成時間 | 30分/件 | 5分/件 |
| 月間見積対応時間 | 約40時間 | 約7時間 |
| 見積ミス | 月10件前後 | 月1件程度 |
| 再作成率 | 約20% | 約2% |
| 成約率 | 20% | 25% |
営業担当の方はこう話していました。
「見積の数字を探す時間が減ったので、お客様に商品の違いを説明する時間が増えました」
見積が早くなっただけではありません。
回答が早くなったことで、お客様が他店へ流れる前に返答できるようになりました。
なぜ効果が出たか
効果が出た理由は、AIそのものよりも、見積の材料を整えたことです。
これまで担当者の頭の中にあった確認項目を、入力画面と価格表に分けました。
さらに、AIには「説明」と「確認漏れチェック」を任せました。
金額の最終判断は人間が行います。
この分担にしたことで、現場の不安が小さくなりました。
「AIが勝手に値引きするのでは」と心配されていましたが、実際には価格表をもとに人が確認するため、安心して使える形になりました。
他の業種でも応用できます
見積が複雑な業種なら、同じ考え方が使えます。
リフォーム業なら、工事内容、材料、職人の手配、現場条件。
設備工事業なら、部材、工数、移動距離、緊急対応の有無。
士業なら、相談内容、必要書類、追加対応の範囲。
大事なのは、AIに丸投げすることではありません。
見積に必要な情報を整理し、人が確認する線を残すことです。
導入時に気をつけたこと
今回の取り組みで注意したのは、最初から完璧な見積システムを作ろうとしなかったことです。
家電の見積には例外が多くあります。
古い住宅で搬入経路が狭い場合、追加の確認が必要です。エアコン工事では、配管の長さや室外機の置き場で金額が変わることもあります。キャンペーンの対象条件も時期によって変わります。
これらをすべて最初から自動で判断させようとすると、現場が不安になります。
そこで、最初の段階では「よくある見積」を対象にしました。
通常配送、標準工事、一般的な保証、よくある下取り。この範囲から始めました。
営業担当の方もこう言っていました。
「例外まで全部任せるのではなく、普通の見積だけ先に楽になるなら使えます」
この考え方が重要です。
業務改善は、難しい例外から始めるより、毎日発生する普通の作業から始めた方が定着します。
現場に定着させるために行ったこと
仕組みを作ったあと、営業担当者向けに短い確認会を開きました。
説明したのは、難しい操作方法ではありません。
入力する順番。
確認が必要な場所。
AIの説明文をそのまま出さず、人が最後に読むこと。
見積金額は必ず価格表と照合すること。
この4点です。
また、初月は毎週1回、実際に作成した見積を見直しました。
どの項目で入力漏れが起きるか。どの説明文がお客様に伝わりにくいか。どの例外を次に追加すべきか。
こうした改善を少しずつ入れたことで、現場の使い勝手が上がりました。
AIを入れて終わりではなく、現場の声を聞いて調整することが大切です。
副次効果:新人教育にも使えるようになった
見積の流れを整理したことで、新人教育にも効果がありました。
これまでは、ベテラン担当者が横について「この場合は保証を確認して」「配送費も忘れないで」と口頭で教えていました。
導入後は、入力項目を見れば確認する順番が分かります。
新人は、まず画面に沿って聞き取りを行い、分からない例外だけ先輩に確認する形になりました。
これにより、教育の時間も減りました。
営業部長はこう話していました。
「見積の作り方が見えるようになったので、教える側も楽になりました」
業務を整えると、作業時間だけでなく、人に教える時間も短くなります。
数字の見方:短縮できた時間を営業活動に戻した
見積時間が短くなると、単に残業が減るだけではありません。
営業担当がお客様と話す時間を増やせます。
以前は、見積を作るためにバックヤードへ戻り、価格表を確認し、工事費を計算し、保証内容を調べていました。
お客様はその間に待つことになります。
導入後は、確認項目がそろっているため、その場で概算を出しやすくなりました。
もちろん最終見積は人が確認しますが、初回回答が早くなるだけで商談の流れは変わります。
「今日中に返します」から「この条件ならこのくらいです」とすぐ話せるようになる。
地域店にとって、このスピードは大きな差になります。
また、修正件数が減ったことで、謝罪や再説明の時間も減りました。
数字以上に、営業担当の心理的な負担が軽くなったことも成果でした。
まとめ
今回の家電量販店では、見積作成を「担当者の経験」から「誰でも確認できる流れ」に変えました。
その結果、見積作成時間は30分から5分前後へ短縮され、修正も大きく減りました。
気になる業務があれば、お気軽にお声がけください。
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