従業員9名の健康食品会社/伝票発行を6分の1にした話
健康食品の卸売・小売業 × 受注・経理・発送担当 × 従業員9名の公開事例

※本記事は、IT導入補助金の公開事例をもとに、同規模の企業が再現しやすい支援の流れとして再構成したものです。弊社の実支援先を示す記事ではありません。

通販の注文が増えるのは、うれしいことです。

ただし、受注のたびに販売情報を確認し、手書き伝票を作り、Excelへ入力し直していると、売れるほど事務が遅くなります。

今回のモデルは、従業員9名の健康食品会社です。販売管理のデータは約5万件。長年使った自社の仕組みは、データが増えるにつれて動作が遅くなり、電話対応にも影響していました。

「お客様を待たせたくない。でも、画面が開くまでに時間がかかる」

経理では、売上データを手書き伝票やExcelへ入力しており、情報が反映されるまで1〜2か月かかることもありました。

課題:受注・伝票・経理が別々に動いていた

現場で起きていたのは、三つの分断です。

第一に、注文を受ける画面と販売情報。

第二に、取引先ごとの指定伝票。

第三に、経理が見る売上データ。

注文内容は同じでも、それぞれの場所へ人が入力していました。

「この取引先は専用の伝票が必要です」

「売上は立っているけれど、経理側へ反映されるのは来月です」

こうした例外対応が増えると、担当者の記憶が欠かせません。人が休むと処理が止まり、急いで入力すればミスが増えます。

約5万件のデータがあるため、単純に新しい表へ移すだけでも危険です。顧客、商品、注文、出荷、請求の関係を崩さず移す必要があります。

施策:販売管理と指定伝票をつなぎ、同じ情報を二度打たない

公開事例では、販売・仕入・在庫を管理する仕組みと、取引先ごとの指定伝票を発行する仕組みを連動させました。

弊社が同様の支援を行う場合も、製品名から決めるのではなく、次の順で整理します。

ステップ1:一件の注文が通る道を追う

電話、通販サイト、テレビや雑誌からの注文が、どの画面に入り、誰が何を確認し、どの伝票を出すか。

実際の一件を使って、入口から発送、経理まで追います。

ここで「同じ顧客名を3回入力している」「商品コードを手で置き換えている」などの重複が見つかります。

ステップ2:取引先ごとの例外を一覧にする

指定伝票、締め日、配送条件、請求方法。

例外を担当者の頭の中に残さず、確認表にします。

すべてを一つの形式へ無理に合わせるのではなく、共通部分は販売管理側で持ち、取引先固有の出力だけを伝票側へ渡します。

難しい言葉でいえば二つのツールをつなげることですが、目的は単純です。

「受注時に入れた情報を、伝票でもそのまま使う」

ステップ3:移行前に数字とサンプルを照合する

公開事例では、IT支援事業者と運用方法を徹底的に話し合い、旧システムからのデータ移行を進めました。

移行時には、全件を一度に信じません。

顧客10件、商品10件、注文10件などの小さなサンプルで、金額、税、住所、伝票の印字位置を確認します。

月次の売上合計も、旧システムと新システムで一致するか比べます。

AIを使うなら、商品名の表記揺れや住所の欠落候補を見つける補助にできます。ただし、金額や顧客情報の確定は人が行います。

成果:伝票発行は6分の1、顧客数は2割増

公表資料では、データ管理の自動化により手作業が不要となり、人的ミスも解消したと報告されています。

伝票発行業務は6分の1へ短縮。顧客数は2割増えました。

項目BeforeAfter
販売データ約5万件で旧システムが遅延新しい販売管理へ移行
経理反映手入力で1〜2か月販売データをつないで反映
指定伝票人が内容を転記販売管理と連動
伝票発行時間基準61
顧客数基準100120(2割増)
人的ミス発生解消したと報告

注文時の処理が速くなり、お客様を待たせる場面も減りました。

「事務を減らしたら、顧客対応まで良くなった」

業務効率化が売上側へ届いた例です。

なぜ効果が出たのか

一番の理由は、伝票だけを速くしなかったことです。

販売情報、在庫、指定伝票をつなぎ、同じ注文を何度も入力する構造を変えました。

もし伝票だけを自動化していたら、売上データの遅れや電話対応の待ち時間は残ったでしょう。

二つ目は、現場の要件を時間をかけて確認したことです。

公開資料には、顧客ごとの細かな要望に対応できるか、支援事業者の具体的な提案を検討したとあります。

小さな会社ほど、標準機能だけでは収まらない長年の取引条件があります。そこを無視して導入を急がなかったことが、運用開始後の安定につながりました。

他の卸売・小売業にも応用できる

同じ流れは、次の業種でも使えます。

  • 食品卸:注文、賞味期限、出荷、請求
  • 化粧品通販:顧客、定期便、在庫、同梱物
  • 部品商社:見積、受注、在庫、指定伝票
  • ギフト販売:送り先、のし、配送日、請求
  • 小規模メーカー:製造数、出荷、売上、入金

共通点は、一つの受注情報を複数の画面や紙へ写していることです。

まず、受注一件あたり何回同じ情報を入力しているかを数えてください。

二回以上なら、仕組みをつなぐ余地があります。

切り替え前に行う3つの検算

販売や請求の仕組みは、速さだけで切り替えると危険です。

一つ目は、金額の検算です。直近1か月の売上合計、税額、値引き、送料を旧システムと新システムで比べます。合計が同じでも、個別注文で差がないかサンプルを確認します。

二つ目は、在庫の検算です。売れた数、返品、破損、セット商品の内訳が正しく減るかを試します。

三つ目は、伝票の検算です。取引先ごとの用紙、文字位置、締め日、配送先が合っているかを、実際のプリンターで確認します。

「画面では合っていましたが、印刷すると住所が切れました」

こうした問題は、実物を出さないと見つかりません。

運用開始後の30日間は、伝票発行時間、訂正件数、問い合わせの待ち時間、経理反映までの日数を記録します。公表事例の6分の1や顧客数2割増をそのまま目標にせず、自社の開始前の数字と比べます。

また、自動化で手作業が減っても、例外注文は残ります。ギフト包装、複数配送先、定期便の一時停止などを「人が確認する一覧」へ集め、通常注文と混ぜないことが安定運用の鍵です。

新しいシステムの目的は、画面を増やすことではありません。売れるほど忙しくなる事務構造を変え、お客様へ返す時間を短くすることです。

気になる受注・伝票業務があれば、お気軽にお声がけください。

弊社では中小企業のAI活用・システム開発の伴走支援を行っています。

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