生花小売 × 注文管理・店舗間連絡 × 従業員10名の公開事例
鳥取県で生花販売とフラワーアレンジメント教室を営む株式会社花工房あげたけでは、母の日、クリスマス、卒業式などの繁忙期に、紙の注文書が1日数百枚、年間では約1万枚に達していました。
紙は、花束の色や配置を絵で伝えるには便利です。
一方で、水濡れ、汚れ、紛失が起きやすく、過去の注文を探すのに時間がかかります。店舗、事務所、外出先の間では、注文内容と進み具合を電話やFAXで確認していました。
同社は過去に多機能な顧客管理サービスを導入したものの、現場に合わず断念した経験があります。そこで代表が、プログラムを書かずに入力画面を作れるツールを使い、必要な機能だけの注文管理アプリを3日で作成しました。
顧客名、納品日、金額、進み具合はデータとして入力。手書きのデザイン画は写真で添付する方式です。
その結果、一連の注文管理工数を90%削減。電話やFAXでの確認も不要になり、空いた時間を4種類のフラワーアレンジメント教室へ振り向けました。
これはアステリアが2024年9月25日に公表した事例です。事例型の情報として時期を問わず参照できますが、現在導入する場合の料金、対応端末、契約条件はあらためて確認が必要です。
課題:紙は表現しやすいが、探す・共有する仕事が増えていた
花の注文書には、文字だけでは伝わりにくい情報があります。
色合い。
花の配置。
札の位置。
贈る相手の雰囲気。
現場にとって手書きの絵は、欠かせない道具でした。
公開資料をもとに会話形式へ再構成すると、次のようになります。実際の発言ではありません。
店舗担当:「絵を見れば一目で分かります。でも、数百枚の中から一件を探すのが大変です」
事務担当:「納品済みか、入金済みかを確認するたび、店舗へ電話しています」
経営者:「紙を全部なくして現場が遅くなるなら、デジタル化の意味がありません」
課題は「紙が古い」ことではありません。
紙が得意な表現と、データが得意な検索・共有を、一つの方法で無理に扱っていたことです。
施策:文字は入力し、デザイン画は写真で残した
改善の中心は、紙かデータかの二択をやめたことです。
ステップ1:探したい項目を文字データにする
検索や並べ替えに使う顧客名、納品日、金額、店舗、担当者、進み具合を入力項目として用意しました。
これにより「今日納品」「未入金」「担当者別」など、必要な注文をすぐ絞り込めます。
自由記述を増やすより、日常の確認に使う項目へ絞ることが大切です。
入力済みの注文を誰が直せるか、変更前の内容をどう確認するか、納品後にいつ閉じるかも決めます。検索できるだけでなく、誤変更と二重対応を防ぐ運用までそろえて初めて共有が安定します。
紙の原本をいつまで保管し、写真と内容が違う時にどちらを正とするかも決めます。繁忙期に判断が止まらないよう、例外の確認担当を一人に固定しません。
ステップ2:絵で伝わる情報は写真にする
花束のデザイン画を無理に選択肢へ分解すると、入力が増え、表現力も落ちます。
そこで手書きの注文書を撮影し、注文データへ添付しました。
文字は検索できる。
絵はそのまま見られる。
紙の長所を残す設計です。
ステップ3:納品と入金の進み具合を同じ画面で共有する
店舗と事務所が同じ注文情報を見られるようにし、納品完了や入金確認を更新します。
電話で「この注文はどうなっていますか」と聞かなくても、画面で確認できます。
外出先からも状況を見られるため、確認のためだけに店舗へ戻る必要も減ります。
ステップ4:10人で使える最小限の画面から始める
同社は、以前の多機能な仕組みが使われなかった経験を生かしました。
最初から顧客分析、販売予測、複雑な会計処理まで入れません。
注文を見つける。
デザインを確認する。
進み具合を共有する。
日常で頻度が高い三つに絞りました。
ステップ5:現場の改善案を次の用途へ広げる
利用が始まると、現場から修正案が出るようになりました。
今後は観葉植物のレンタル管理、人材育成に使う作品集などへの展開も計画されています。
最初の画面が完成品ではなく、改善の土台になっています。
成果:注文管理を90%減らし、新しい教室へ時間を戻した
公開資料で確認できる変化は次の通りです。
| 項目 | Before | After | 変化 |
|---|---|---|---|
| 注文書 | 年間約1万枚の紙 | 基本情報を入力し、絵は写真添付 | 紙とデータを役割分担 |
| 繁忙期 | 1日数百枚から探す | 日付・顧客・進み具合で検索 | 検索負担を削減 |
| 店舗間確認 | 電話・FAX | 同じ画面で確認 | やり取りを削減 |
| 注文管理工数 | 導入前を100% | 約10%相当 | 90%削減 |
| 作成期間 | 現場に合う画面なし | 3日で作成 | 小さく開始 |
| 新しい取り組み | 時間を確保しにくい | 4種類の教室を毎月開催 | 本業以外へ時間を再配分 |
「90%削減」は、同社が公開した一連の注文業務に関する数値です。個別の作業時間や費用内訳は公開されていません。本記事では、未公開の時間を作らず、基準を100%とした比較に留めています。
また、削減効果を出したのはアプリだけではありません。入力項目を絞り、紙を一部残し、10人の現場に合う運用へ変えたことを含む成果です。
なぜ効果が出たか:全部をデータにしなかった
一般に、デジタル化というと紙をゼロにすることが目標になりがちです。
しかし生花店では、手書きの絵が早く正確な場面があります。
同社は、検索したい文字情報だけをデータにし、表現したい絵は写真で残しました。
現場の便利さを壊さず、探す・共有する部分だけを変えたため、定着しやすくなりました。
もう一つの理由は、過去の導入失敗を設計条件にしたことです。
機能が多いほど良いのではなく、毎日使う機能だけが価値になります。
横展開:文字と図が混ざる注文で応用できる
同じ考え方は、次の業種にも使えます。
- ケーキ店:氏名・納品日は入力、デザイン指定は写真
- 印刷会社:部数・納期は入力、レイアウト指示は画像
- 修理業:受付情報は入力、故障箇所は写真
- 内装業:案件・期限は入力、仕上がりイメージは手描き図
- オーダー服:採寸値は入力、希望デザインは画像
最初に「後で検索したい項目」と「見た方が早い情報」を分けます。
全部を文字へ直す必要はありません。
まとめ:現場の紙を否定せず、探す仕事だけを減らす
花工房あげたけの事例では、年間約1万枚の注文書を扱う流れを見直し、代表が3日で注文管理アプリを作成しました。
顧客名や納品日はデータ、手書きのデザイン画は写真として残し、注文管理工数を90%削減。電話やFAXでの確認を減らし、新しいフラワーアレンジメント教室へ時間を戻しています。
成功の理由は、紙を全部捨てたことではありません。
紙が得意なことと、データが得意なことを分けたことです。
注文書や指示書が多く、探す・転記する時間がかかっている場合は、お気軽にお声がけください。弊社では、現場の使い方を残しながら、検索と共有を楽にする仕組みづくりを支援しています。