従業員12名のファイナンシャルプランナー/資料作成4時間を1時間に短縮した話
東北地方・従業員12名のファイナンシャルプランナー事務所/アドバイザーの事例

※本記事の業務場面と会話は、2025年7月時点の事例データに記録された課題・施策・数値をもとに、個社を特定できない形で編集部が再構成しています。

ファイナンシャルプランナーの仕事では、相談者ごとに家族構成、希望、過去の提案、確認中の資料が異なります。提案の品質を保つには丁寧な準備が欠かせません。

一方で、過去履歴を探す、案件の進み具合を確認する、似た資料を作り直すといった作業が増えると、本来使いたい相談時間が減ってしまいます。

今回の事例は、従業員12名の事務所です。事例データの定量的効果欄には、資料作成4時間から1時間、案件管理12時間から4時間、クライアント対応4時間から1.5時間という変化が記録されています。

改善の中心は、AIへ資産設計を任せることではありません。相談記録と案件の状態を同じ形にそろえ、AIは提案資料の下書きと確認候補に限定しました。

課題:相談履歴を探してから、提案準備が始まる

改善前は、相談記録、メール、面談メモ、提案資料が担当者ごとに分かれていました。過去の対応履歴を確認するだけで、一件平均10分ほどかかることもありました。

アドバイザーは「前回どこまで話したかは覚えています。でも、根拠になる資料を探すと時間がかかります」と話していました。

案件の進み具合も、担当者の記憶に依存していました。追加資料待ち、社内確認中、提案日調整中といった状態が一覧になっていないため、週の確認では一件ずつファイルを開きます。

提案資料は一件平均3時間かかるという課題記録があり、定量的効果の比較欄では4時間が基準値として使われています。似た相談でも、過去資料を見つけにくく、ゼロから作り直す場面がありました。

請求と入金の確認も別管理。月末にまとめて確認するため、未確認案件の把握に半日ほどかかることが課題に挙げられていました。

「提案の内容より、資料をそろえる作業に追われている」

この状態を変えるため、相談受付から請求確認までの情報の流れを見直しました。

施策:相談・案件・資料を同じ番号でつないだ

ステップ1:相談記録の項目をそろえる

最初に、相談内容を入力する画面を作りました。相談者の希望、確認した事実、未確認事項、次回までに準備する資料、担当者を同じ順番で残します。

個人情報は必要な範囲だけに絞り、閲覧できる担当者を限定します。AIの下書きに氏名が不要なら、案件番号へ置き換えます。

入力項目を増やしすぎないことも重要です。面談後5分ほどで残せる量から始め、実際に次回提案へ使わなかった項目は外しました。

ステップ2:案件の状態と次の行動を一覧にする

相談記録には案件番号を付け、提案準備、資料待ち、社内確認、顧客確認、完了という状態を一覧へ表示します。

「対応中」という表現は使いません。次に動く人と期限が分かる言葉へ変えます。

責任者は「一覧を見れば、顧客へ確認すべき案件と、社内で止まっている案件を分けられるようになった」と振り返ります。

ステップ3:AIは提案資料の構成と確認候補に使う

過去の承認済み資料と相談記録をもとに、提案資料の構成、説明が不足している箇所、追加で確認すべき質問の候補を作ります。

AIが利回り、税務、保険、契約条件を確定するわけではありません。数値、制度、商品条件、相談者への適合性は、担当者が最新資料と照らして確認します。

「下書きがあると速い。でも、相談者に合うかを決めるのは私たちの仕事です」

この境界を明確にしたため、AIの文章をそのまま提案として送ることはありませんでした。

ステップ4:確認表で資料の品質をそろえる

提案資料には、相談者の希望、根拠資料、数値の時点、未確認事項、担当者、確認者を確認する表を付けました。

経験者の勘を長い手順書へするのではなく、提出前に必ず見る項目へ変えます。AIも不足候補を示しますが、確認済みの印を付けるのは人です。

ステップ5:請求と入金確認を案件へ戻す

提案と契約だけで案件を完了にせず、請求予定日、入金確認、次回連絡まで同じ案件番号でつなぎます。

月末に全件を探すのではなく、確認日を過ぎた案件だけを一覧にします。金額の変更や督促送信は自動にせず、担当者が原資料を確認します。

ステップ6:一か月の段階導入で修正する

事例データでは、現状分析3日、設計4日、入力画面と自動集計の準備5日、AI支援機能2日、研修1週間、段階運用2週間という流れが記録されています。

重要なのは日数そのものではなく、設計、試用、研修、段階運用を分けたことです。作ってすぐ全案件へ広げず、新規相談から試しました。

成果:資料作成だけでなく、案件確認も短くなった

事例データの定量的効果欄には、次の変化が記録されています。

項目BeforeAfter
クライアント対応時間4時間1.5時間
案件管理時間12時間4時間
資料作成時間4時間1時間
顧客満足度85%95%

顧客満足度は、仕組みだけで決まる数字ではありません。担当者の説明、商品、地域、調査方法など複数の要因を受けます。そのため、他社でも同じ割合になると考えず、自社の基準値を取る必要があります。

現場で大きかったのは、資料の再利用がしやすくなったことでした。過去の承認済み資料を案件の種類で探せるため、ゼロから構成を考える回数が減ります。

「相談者との話を思い出す時間ではなく、今の希望を確認する時間へ変わった」という声も出ました。

なぜ効果が出たのか

第一に、AIより先に相談記録を整えたからです。入力がばらばらなら、下書きも安定しません。

第二に、案件の状態と次の行動を分けました。「対応中」を減らすと、止まっている理由が見えます。

第三に、AIの役割を下書きと不足候補へ限定しました。金融判断、制度確認、商品選定、送信を人へ残したことで、確認責任が曖昧になりません。

第四に、請求まで同じ案件番号でつなぎました。提案だけ速くしても、後工程が別管理なら全体の負担は残ります。

他の業種でも応用できる

同じ考え方は、相談、提案、契約、請求が続く専門サービスへ応用できます。

  • 社労士事務所:相談、必要書類、手続期限、請求をつなぐ
  • 行政書士事務所:依頼内容、追加資料、確認者、提出日をそろえる
  • 保険代理店:意向確認、提案根拠、契約後の連絡を残す
  • Web制作会社:要望、提案、素材待ち、公開確認、請求を一覧にする

最初は新規案件10件で、入力時間、資料作成、確認時間、差し戻しを測ります。

導入前に守るべき境界

相談情報は機密性が高く、入力してよい情報を先に決める必要があります。外部サービスを使う場合は、契約条件、データの保存、学習利用の扱い、利用者権限を確認します。

また、AIの下書きが自然でも、制度や商品情報が最新とは限りません。資料内に情報時点と出典を残し、公開前・提案前に担当者が確認します。

効果測定では、作成時間だけでなく、確認時間、修正回数、顧客からの追加質問も見ます。速く作って説明不足が増えていないかまで確認します。

まとめ

ファイナンシャルプランナーの資料作成を4時間から1時間へ変えた土台は、AIの文章力だけではありません。

相談を同じ形で残す。案件の次の行動を見えるようにする。承認済み資料を探せるようにする。AIは下書きと確認候補へ使い、金融判断は人が行う。

この分担が、少人数でも提案品質と業務時間を両立させる方法です。

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