観光・体験サービス業 × 予約・事務担当 × 従業員4名の公開事例
※本記事は、IT導入補助金の公開事例をもとに、中小企業が再現しやすい支援の流れとして再構成したものです。弊社の実支援先を示す記事ではありません。
農家に泊まり、地域の暮らしや農業を体験する「農泊」。魅力的なサービスでも、運営側の人数は多くありません。
今回のモデルは、従業員4名の事業者です。宿泊と農業体験を始めて2年。予約は電話で受け、内容をExcelへ入力していました。
「電話を切ってから入力しようと思っていたら、別の対応が入ってしまった」
「人数変更を聞いたのは誰だったか、表を見ても分からない」
小規模な現場ほど、一人が受付、企画、現地対応、会計まで兼ねます。予約が増えるほど忙しくなる一方で、転記や確認の時間も増えていました。
課題:電話とExcelの間に、見えない作業が積み上がっていた
公開事例で示された課題は、単に「Excelが古い」という話ではありません。
電話で聞いた内容を覚える。
手元のメモへ書く。
空き状況を確認する。
Excelへ転記する。
変更があれば、元の行を探して直す。
当日のスタッフへ共有する。
一つひとつは数分でも、予約のたびに繰り返します。
さらに、施設利用マニュアルや来訪者アンケートも紙のまま。集めた回答を料金や体験プログラムの改善に使いにくい状態でした。
「アンケートはある。でも、見返す時間がないんです」
こうした声は、宿泊業に限りません。少人数の体験教室、見学施設、イベント運営でも起こります。
問題の中心は、予約情報が一か所に入らず、あとから人がつなぎ直していたことです。
施策:予約受付から変更、アンケートまでを一つの流れにする
公開事例では、インターネットで予約を受け付けられる仕組みを導入し、2021年4月に運用を開始しました。アンケートの作成・配信や自動分析にも対応するクラウド型サービスを利用しています。
弊社が同規模の現場を支援する場合も、最初から大きな宿泊管理システムを作るのではなく、次の3段階で進めます。
ステップ1:予約時に必ず必要な項目を決める
氏名、連絡先、人数、希望日、体験メニュー、食事上の注意、交通手段。
まずは、電話で毎回聞いている項目を洗い出します。
ここで大切なのは、項目を増やしすぎないことです。入力画面が長いと、予約する人が途中で離れてしまいます。
「当日までに絶対必要な情報」と「あとから確認できる情報」を分けます。
ステップ2:予約と変更が同じ場所に残るようにする
新規予約だけをネット化しても、変更を電話や個人メッセージで受けると情報は再び分散します。
予約番号や氏名から対象を探し、変更履歴が残る形にします。スタッフが見る画面も一つに絞ります。
専門的にはデータをまとめる仕組みですが、現場では「最新版を一か所だけ見ればよい状態」にする、と考えると分かりやすいでしょう。
ステップ3:アンケートを次の企画へつなげる
満足度だけで終わらせず、選んだ体験、家族構成、再訪意向、料金への反応を整理します。
公開事例では、アンケートデータから顧客の好みをつかみ、プログラム内容や料金設定の検討に使えるようになりました。
AIを使う場合も、自由記述を要約するだけでは足りません。
「子ども向け体験への要望」「雨天時の困りごと」「料金で迷った点」など、次の改善に使う分類を人が先に決めます。
成果:予約管理の手間6割減、事務効率は2倍へ
公表資料では、予約管理の手間が6割減り、事務効率が2倍に向上したと報告されています。
| 項目 | Before | After |
|---|---|---|
| 予約受付 | 電話中心 | インターネット受付を開始 |
| 予約情報 | Excelへ手入力 | 一つの仕組みで受付・変更 |
| 紙作業 | 受付や事務で発生 | 紙による事務作業を削減 |
| 入力ミス | 転記時に発生 | 激減したと報告 |
| 予約管理の手間 | 基準100 | 約40(6割減) |
| 事務効率 | 基準1 | 約2倍 |
数字以上に大きいのは、予約が増えるほど転記も増える構造から抜けられたことです。
「確認の電話が来ても、同じ画面を見ながら答えられる」
この状態なら、担当者が変わっても対応しやすくなります。
なぜ効果が出たのか
理由は、予約だけでなく、その後の変更とアンケートまで同じ流れに置いたことです。
予約フォームだけ作っても、現場の表が別なら二重入力が残ります。アンケートだけ電子化しても、誰が分析するか決めなければ数字は眠ります。
入口、管理、改善をつないだため、手間の削減が企画の質にもつながりました。
また、導入時には専門家の助言も活用しています。少人数の会社では、担当者一人に設定と運用を背負わせないことも重要です。
他の小規模事業にも応用できる
同じ考え方は、次の業種でも使えます。
- 体験教室:予約、持ち物、キャンセルを一元化
- キャンプ場:区画予約と来場記録を接続
- 観光ガイド:参加者情報と当日の連絡を整理
- 小規模旅館:食事制限と部屋割りを事前共有
- イベント運営:申込、入金、アンケートを一つの流れに
最初に選ぶのは、多機能な製品ではありません。
電話のあとに何を転記しているか。変更が来た時にどこを直しているか。誰が最新版を持っているか。
この3点を確認するところから始めます。
導入前に決めておきたい5つの確認項目
小規模な予約業務は、担当者の判断で回っている部分が多いため、画面を作るだけでは定着しません。
導入前に、次の5点を紙一枚へまとめます。
1. 電話予約を残す条件
2. キャンセル料と変更期限
3. 食物アレルギーなど慎重に扱う情報
4. インターネットが使えない時の受付方法
5. 予約内容を確定する担当者
「ネット予約にしたら、電話は受けないのでしょうか」
高齢のお客様や団体予約など、電話が適する場面は残ります。大切なのは電話を禁止することではなく、電話で受けた内容も最後は同じ管理場所へ入れることです。
最初の2週間は、予約件数、変更件数、入力漏れ、確認電話の回数を毎日記録します。手間が減ったかだけでなく、お客様が迷っていないかも確認します。
1か月後には、アンケートの回答を三つだけ選び、次の体験プログラムや案内文へ反映します。集めた情報を使う会議まで予定に入れて、初めて仕組みが改善へつながります。
予約管理を整える目的は、電話をなくすことではありません。人でしかできない案内や地域ならではのおもてなしへ、時間を戻すことです。
気になる予約業務があれば、お気軽にお声がけください。
弊社では中小企業のAI活用・システム開発の伴走支援を行っています。