従業員30名の障害者支援施設/記録作成を2時間から60分に短縮した話
医療・介護・福祉業(障害者支援施設)× 施設長・支援員 × 従業員30名
※本記事はマスターCSV事例 #126 をもとに、支援の流れが伝わるよう編集部で再構成しています。数値は同CSVに記録された条件であり、同じ成果を保証するものではありません。

課題:記録を書くために、利用者と向き合う時間が削られていた

障害者支援施設では、日々の支援内容、体調、家族からの連絡、服薬、申し送り、個別支援計画に関する気づきを記録します。記録は安全と支援品質の土台ですが、書く場所や言葉が担当者ごとに違うと、必要な情報を探すだけで時間がかかります。

この施設では、記録作成に1日2時間。利用者情報の検索には1件12分。ケアプラン作成には10時間かかっていました。

「夜勤の申し送りで聞いた内容と、紙の記録がつながらないことがありました」

支援員は、勤務後に記憶をたどって記録します。施設長は、複数の記録から必要な情報を探し、表現をそろえ、計画書へ転記します。忙しい日は記録が短くなり、後から質問が増える悪循環でした。

施策:入力を短くし、検索と承認を後ろで支える

今回の支援では、支援員に長い文章を書かせる仕組みを作りませんでした。現場では選択と短いメモで入力し、必要な文章は後から下書きします。本人・家族に関わる重要な判断は、必ず施設職員が確認します。

ステップ1:まず一日の記録項目をそろえる

紙の記録、申し送りノート、表計算にある項目を確認し、重複を減らしました。

  • 利用者名と支援日時
  • 体調・服薬・食事
  • 実施した支援
  • いつもと違う点
  • 家族や関係者からの連絡
  • 次の勤務者に確認してほしいこと

文章を上手に書くことより、後で探せる項目を残すことを優先しました。スマートフォンや共有端末から入力する画面を使い、選択肢と短いメモで記録できます。

「何を書けばいいかが決まったので、勤務の最後に思い出す作業が減りました」

ステップ2:重要な変化を一覧で見つける

入力された情報は、日付、利用者、支援内容、体調変化で探せるようにしました。未確認の記録や、服薬・事故・家族連絡など確認が必要な項目は、施設長の一覧へ表示します。

AIは、記録の抜けや表現のばらつきを知らせる補助に使います。ただし、診断、支援方針、服薬判断は行いません。現場の安全に関わる内容は、人が元の記録を見て判断します。

ステップ3:計画書は確定記録から下書きする

個別支援計画の見直し時には、対象期間の確定済み記録をまとめ、変化、継続課題、本人の希望、家族の意見を整理した下書きを作ります。

「AIが結論を出すのではなく、見落としがないか確認するための材料にしました」

施設長は、下書きと元の記録を並べて確認し、本人との面談内容を加えます。確定前には複数職員で確認し、誰が承認したかを残します。

ステップ4:手順書を「作って終わり」にしない

新人向けの記録手順書には、良い記入例、避ける表現、緊急時の連絡先を載せました。質問が出たら記録し、月1回の見直しで手順書へ反映します。

Geminiを使った手順書づくりの調査でも、手順書を一度生成するだけでは定着せず、質問、更新、最終承認の流れが必要だと指摘されています。今回も、更新担当者と承認者を決め、古い版を現場へ残さないようにしました。

成果:記録時間を半分にし、情報検索は12分から3分へ

マスターCSVに記録された導入前後は次の通りです。

項目BeforeAfter
記録作成時間2時間60分
利用者情報の検索12分3分
ケアプラン作成10時間4時間
利用者満足度85%92%
職員満足度65%85%

記録作成は2時間から60分、情報検索は12分から3分、計画書作成は10時間から4時間へ短縮しました。

副次的な効果は、申し送りの会話が具体的になったことです。「昨日どうだった?」ではなく、「夕方の食事量が少なかった理由を確認したい」と、記録をもとに話せます。

新人も、ベテランの頭の中にある表現を推測するのではなく、同じ項目と例を見て書けます。ベテランはすべてを直すのではなく、本人らしさや安全に関わる部分へ集中できます。

なぜ効果が出たか:AIより先に、記録の責任を決めた

福祉現場の記録は、文章を短くするだけでは改善しません。誰が入力し、誰が確認し、どの情報を計画へ反映するかが曖昧なら、別の確認作業が増えます。

今回のポイントは三つです。

1. 現場入力は選択と短いメモへ絞った

2. AIの役割を整理と下書きに限定した

3. 重要判断と最終承認を職員へ残した

この境界があるから、速さと支援品質を同時に守れます。

個人情報を扱うために決めたこと

福祉現場では、便利さより先に、誰がどの情報を見られるかを決める必要があります。

今回の再構成では、支援員、サービス管理責任者、施設長で閲覧できる範囲を分けました。AIへ渡す情報も、記録整理に必要な範囲へ限定します。本人確認に不要な住所、連絡先、保険情報などを、文章の下書きへむやみに含めません。

端末を共有する場合は、利用者ごとのログイン、一定時間での自動終了、画面を開いたまま離れないルールを設けます。外部へ送る文書は、AIの下書き段階と職員が承認した正式版を区別しました。

誤った記録が見つかった時は、上書きして消すだけにしません。元の記録、修正内容、修正者、承認者を残します。事故・服薬・虐待が疑われる内容などは、通常の要約対象から外し、施設の緊急連絡手順を優先します。

「どこまでAIを使わないか」を先に決めたことで、職員も安心して日常の記録整理へ使えるようになります。

導入後も月1回、閲覧権限、退職・異動した職員のアカウント、長期間更新されていない手順書を確認します。便利な機能を追加する前に、現在の記録が安全に探せるか、誤りを直せるか、緊急時に人へ連絡できるかを点検する運用です。

小さな確認を、毎月続けます。

他の福祉・介護現場にも応用できる

  • 放課後等デイサービス:活動記録と保護者連絡
  • 共同生活援助:生活記録と申し送り
  • 訪問介護:訪問記録とサービス提供責任者の確認
  • 高齢者施設:体調変化と家族連絡の共有

最初は一つの記録様式、数名の職員、個人情報を抑えたテストデータで試します。入力時間だけでなく、修正回数、検索時間、申し送りで追加確認した回数も測ると、現場に合うか判断できます。


記録、申し送り、計画書の転記に時間がかかっている。そんな現場があれば、お気軽にお声がけください。

弊社では、個人情報と現場の承認を大切にしながら、中小企業・福祉事業者の業務システムづくりを伴走しています。

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