小売業・百貨店・店舗運営責任者・従業員25名の事例
課題:売場の状況確認が人づてで、判断がいつも遅れていた
新潟県の地方百貨店では、店舗運営責任者が毎朝の売場確認、在庫確認、スタッフからの報告、催事準備、売上集計を一人で抱えていました。
売場担当者はそれぞれ状況を把握しています。ただ、その情報が店全体の判断に使える形になっていませんでした。
「昨日の売れ筋は、担当者に聞けば分かります」
責任者の方は最初、そう話していました。
しかし実際には、担当者が休みの日は状況が分からない。紙のメモは売場ごとに書き方が違う。閉店後にExcelへ転記するため、翌朝まで数字が見えない。
特に困っていたのは、次の3つです。
- 在庫の確認に時間がかかる
- 売場ごとの報告内容がばらばら
- 催事やセール前の準備漏れが起きる
担当者からは、こんな声もありました。
「売れている商品は分かるけど、他の売場と比べるところまでは見られません」
責任者は、売場を回って聞き取り、メモを集め、閉店後に数字を確認していました。1日あたり約90分、月にすると30時間以上が確認と転記に使われていました。
施策:報告の入力画面をそろえ、スプレッドシートで自動集計した
今回行ったのは、大きなシステム導入ではありません。
まず、売場ごとにばらばらだった報告を、同じ入力画面にそろえました。
専門的に言えばGoogleフォームとスプレッドシートの活用ですが、現場には「スマホで入力できる報告画面」と説明しました。
ステップ1:毎日見る項目を10個に絞る
最初に、責任者が毎日見ている項目を書き出しました。
売上、在庫、欠品、客数の感覚、問い合わせ、返品、催事準備、スタッフ不足、クレーム、明日の注意点。
全部を細かく取ろうとすると入力が続きません。そこで、毎日の判断に使う項目だけに絞りました。
「これなら閉店前の5分で入れられます」
売場担当者からこの言葉が出たところで、項目を確定しました。
ステップ2:入力された内容を自動で一覧にする
次に、入力された報告がスプレッドシートへ自動で集まるようにしました。
責任者は売場ごとの紙を集める必要がなくなりました。朝の時点で、前日の報告を一覧で確認できます。
在庫が少ない商品、問い合わせが増えた商品、準備が遅れている催事を色で分かるようにしました。
難しい言葉は使わず、現場には「赤くなったところだけ見ればよい表」と説明しています。
ステップ3:AIで週次コメントのたたき台を作る
最後に、1週間分の報告をもとに、AIで振り返りコメントのたたき台を作りました。
「今週は婦人雑貨の問い合わせが増えています」
「在庫不足の報告が3日続いています」
「催事準備の確認が前日集中になっています」
このような文章をAIが下書きします。
責任者は内容を確認し、自分の言葉に直して朝礼で共有します。
AIに判断を丸投げするのではなく、見落としを減らす補助として使いました。
成果:確認時間が半分以下になり、売場判断が早くなった
導入から2か月で、確認作業の時間が大きく減りました。
| 項目 | Before | After | 変化 |
|---|---|---|---|
| 売場報告の回収 | 紙と口頭で毎日45分 | 入力画面で毎日10分確認 | 35分削減 |
| 在庫確認 | 売場ごとに聞き取り60分 | 一覧表で20分 | 40分削減 |
| 閉店後の転記 | 1日30分 | ほぼ不要 | 月10時間以上削減 |
| 欠品の見落とし | 月8件前後 | 月3件前後 | 約60%減 |
| 売場会議の準備 | 週2時間 | 週45分 | 半分以下 |
数字以上に大きかったのは、責任者の判断が早くなったことです。
以前は「担当者に聞いてから考える」状態でした。導入後は、朝の時点で店全体の状況を見て、優先順位を決められるようになりました。
責任者はこう話していました。
「売場を回る時間がなくなったわけではありません。でも、聞きに行く前に見るべき場所が分かるようになりました」
売場担当者側にも変化がありました。
「報告を入れると、翌日の朝礼でちゃんと話題になるので、入力する意味が分かるようになりました」
入力するだけで終わらせず、朝礼や週次会議で使ったことが定着につながりました。
なぜ効果が出たか:売場の情報を同じ形で集めたから
この事例で大事なのは、AIや自動集計そのものではありません。
最初にやったのは、売場ごとに違っていた報告の形をそろえることでした。
小売業では、現場の感覚がとても大切です。ただ、感覚だけに頼ると、店全体の判断に使いにくくなります。
「昨日は忙しかった」
「問い合わせが多かった」
「在庫が少ない気がする」
こうした言葉を、毎日同じ項目で残すだけでも、判断材料になります。
そのうえで、スプレッドシートを自動で動かす仕組みやAIの下書きを組み合わせると、責任者が数字と現場感の両方を見られるようになります。
他の業種でも応用できる
同じ考え方は、百貨店だけではありません。
ドラッグストアなら、欠品・問い合わせ・発注判断。
飲食店なら、仕込み量・廃棄・予約状況。
学習塾なら、欠席連絡・保護者対応・面談準備。
介護施設なら、申し送り・ヒヤリハット・家族連絡。
どの業種でも、まずは「毎日見ているけれど形になっていない情報」をそろえるところから始められます。
大切なのは、いきなり大きな仕組みにしないことです。
毎日5分で入力できる。翌朝の判断に使える。会議で見返せる。
この小さな流れができると、現場に定着しやすくなります。
まとめ:報告は集めるだけでなく、翌日の判断に使う
今回の百貨店では、報告をデジタル化しただけではありません。
報告を、翌日の売場判断に使える形へ整えました。
紙をなくすことが目的ではなく、責任者が早く判断できるようにすることが目的です。
AIも、判断を代わりにするものではなく、見落としを減らし、振り返りを速くする補助として使いました。
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